第50話
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ているのか、速すぎてよくわからんぞ」
「独りでに動いている、妖術だ!」
未知の技術を目の当たりにし、兵士達が動揺する。
これこそ、李典が長い歳月を経て生み出した最高傑作“螺旋槍”である。
本来は掘削機として開発したものだが、この物騒な時代、武器としての用途もあるのだ。
動力は――企業秘密である。
『……』
原理は不明だが、ソレを回転する刃と確認した華雄兵達は警戒心を露にした。
彼らとて唯の脳筋ではない。回転が及ぼす力を理解している。
例えば矢。添え付けてある羽は、矢を直進させる回転を生み出す為の物だが、それが矢の貫通力に一役買っていることを彼等は知っている。
その貫通力を高める回転が、突く事に特化した槍に用いられる、確かに脅威だ。
「無駄だ、私に虚仮威しは通用せん」
「ちょ、姉御!?」
――よし!
戦斧を肩に掛け悠々と近づいてくる鬼神に、李典は内心歓喜した。
遥か各上である華雄に勝利する為、必要なものが三つある。
一つは、自身の得物である螺旋槍。
カラクリに時間を費やし、鍛練を怠ってきた李典の武は、武器の性能に大きく依存している。
二つ目に相手の油断。
華雄が兵達と同様、未知の武器に警戒心を抱いていたら李典に勝機は無い。
どのような奇策、奇襲も、細心の注意で臨んだ華雄の前では無駄に終わるだろう。
しかし華雄は警戒するどころか、笑みを浮かべながら大股で近づいてくる。
取るに足らない相手と評されるのは癪だが、今回ばかりはそれを望んだ。
三つ目は運。元より分の悪い賭け、最後に頼るのはこれだけだ。
「どうした、来ないならこっちから――!?」
もう四五歩で間合いに入るかという時に、華雄は相手の奇行に動きを止めた。
李典が突然、得物を地面に突き刺したのだ。戦闘放棄とも取れる行動。
無論、彼女の闘争心は些かも衰えていない。これは勝つための布石。
面食らった華雄の顔を確認するまでも無く、李典は仕掛けた。
「ドリヤアアァァッッ!」
本来の用途、掘削機として地面を抉った螺旋槍を華雄に向かって振るう。
すると――大小様々な形の石や土が華雄に放たれた。
「!?」
「もらったァァァッッ!」
すぐさま間合いを詰めて螺旋槍を“横薙ぎ”に振るう。
予測不能な奇行で間を作り、視界を遮り、突きに特化したソレで横から仕掛ける。
螺旋の刃は常に回転している。突きが一番効果的だが、ソレに触れただけでも無事ではすまない。
服を、肉を巻き込み、削る要領で引き裂く。致命傷は免れても、戦闘力は大きく低下するはずだ。
そこへ、渾身の突きを――
「!?」
――入れるはずの
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