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恋姫†袁紹♂伝
第50話
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運用は考慮してないのだ。
 カラクリとは複雑で繊細なもの、本番中にどのような不具合が起きるかわからない。
 故に李典は、その万が一、億が一を無くすため、夜通しで整備に当たることを決定していた。
 そもそも自分達工作兵は、戦において非戦闘要員。
 前線に出ることが無いのであれば、多少の徹夜は問題無い――はずだった。

 アレ(華雄)が来るまでは。

 天幕内に入ってきた兵士達を確認し、李典は思わず整備中の投石機に隠れた。
 他意はない。ただ、主のお仕置きが怖かっただけだ。
 主の熱望するナニかを持っているからか、自分に対する仕置きだけは厳しいものがある。
 指示に反してこの場に居ることがばれれば、規律を重んじる華琳から仕置きがあることは必須。
 未だに、胸に受けた平手打ちの手形が残っている……。

 そうして物陰から様子を窺っていた李典の目に映ったのは、同色の兵に斬りつけられる部下達の姿。李典の工作隊は職人気質な者達の集まりだ。剣を帯びてはいるものの、それを振るうことは無い。技師としての能力に特化した彼らに、味方だと思い込んだ者達からの凶刃に反応できるはずも無く――。

『!?』

 突然の事に目を白黒させながらも、李典は気配を消して事態を見極めようと務めた。
 そして見つけた。忘れられない、忘れるはずも無い仇討ちの顔。華雄。

『まだ鼠が隠れているな、出て来い!』

 しまった! と、思う間もなく。僅かに放ってしまった殺気を気取られた。
 あのまま潜んでいれば、不意を打てたかも知れないと言うのに……。

『……バレとったか、てか鼠はそっちやろ!』

 気丈に振舞いながらも、震えが止まらない。圧倒的強者の気を感じ、絶望感で満たされていく。
 兎が獅子の前に姿を現すようなものだ。我ながら、無謀にも程がある。

「フン、投石機だけが目的だったが。文字通り、大きなおまけが付いたな」

「――ッ、く」

 茶番を挟んで弛緩しかけた空気は、華雄の仕切り直しにより緊張状態に戻った。

「……ほう?」

 反射的に得物を構えたのを見て、華雄が意外そうに声を上げる。
 大方、逃走すると踏んでいたのだろう。李典としても、逃げ出したいのは山々だ。
 だが、ここには投石機がある。此度の戦の要にして、李典の作品である投石機が。
 自らの手で設計し、組み上げ、整備、修繕、改良を行ってきたのだ。
 最早それは、親が子を生み育て上げると同義。ならば――

「子を見捨てて、親が逃げ出すわけ無いやろッッ!」

 吐き出すように叫び、己の得物を作動させる。
 すぐさま先端にある螺旋状の刃(ドリル)が高速回転し、威嚇するような回転音が天幕内に響いた。

「な、何だアレは!?」

「回転……し
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