第50話
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を陽軍に渡せば、魏軍はあっというまに蹂躙されるだろう。
数に劣る魏軍は、石橋を叩いて渡る必要がある。
そんな彼らがこの状況で恐れるのは――大炎による夜襲。
それを抑止するのに投石機は必要不可欠、動かせる状態で無いといけない。
しかし、雨風にさらして不具合が起きるのもまずい。故に歪な天幕。
何事も無ければ雨風をしのげ、異常があればすぐさま使える。迅速に動かす為の明かりも絶やせない。
「警備の類が少ないのは、想定外だったがな」
「おお!」
天幕内にいた数人の魏兵を倒し、華雄兵は中の光景に目を光らせる。
投石機だ。自分達の目標であるソレが、大岩を設置した状態で鎮座している。
それは紛れも無く、直ぐに使える為の形。華雄の推察通りだ。
「まだ鼠が隠れているな、出て来い!」
「……バレとったか、てか鼠はそっちやろ!」
華雄の言葉で、投石機の陰から一人歩み出てきた。
その姿を見て華雄達は目を見開く。彼女には見覚えがあった。
「あの爆乳」
「形」
「揺れ具合」
『間違いない。李典だ』
「あんたらどこで人を判別しとるんやァァッッッ!」
華雄兵達の呟いた言葉に、李典は慌てて胸を隠すように腕を組んだ。
それが意図せず果実を押し上げ、男共が中腰になる。
その光景に華雄は頭を抱えそうになった。重要な任務の最中だというのに……。
「フン、投石機だけが目的だったが。文字通り、大きなおまけが付いたな」
「――ッ、く」
「……ほう?」
得物を構えた李典を見て、華雄は意外そうに声を上げた。
両者の武力には天と地ほどの差がある。それは対峙した時点で察しが付いていた。
武をかじっている李典も重々承知のはず、彼女がこの場で取るべき行動は応戦では無く逃走だ。
華雄達に背を向け手に持つ得物で天幕を引き裂き、闇と雨に紛れての逃走。
第一目標が投石機である華雄達に、それを追う暇は無い。
三羽鳥の一羽にして魏将の一人に数えられる李典が、その事に気がつかないとは思えないが。
「……」
それも所詮、華雄から見た理屈。李典の心情はもっと複雑だ。
彼女が此処で華雄達に出くわした事、それ自体はただの偶然である。
明日以降に備えるため、今日は休息をとるようにと指示を受けていたが。
李典はその言葉に反し、投石機の整備と点検を徹夜で行う心算でいた。
それも無理からぬ事、この投石機は魏軍の要にして生命線だ。
であれば、それを手掛けたカラクリ技師として整備は怠れない。
日が沈んだ後簡単な点検を行い、問題は無いと判断したが李典の不安は尽きなかった。
春蘭による通過儀礼は済ませているが、雨天での
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