第50話
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を貴様――ガッ!?」
「な!? いきなり……何故…………」
「へっ、近づければこっちのもんだぜ」
魏軍の鎧を纏った兵士が、同色の兵を手に掛けた。
言うまでも無く、彼の正体は華雄兵の一人である。
見張りの装備一式を拝借し、目端が利く者に着せて先行させ、隊がそれに続く。
敵兵を確認したら合図で隊を止め、魏兵に扮して近づき、不意を打って片付ける。
華雄達はこの方法で、少しずつ魏本陣を目指した。
少数精鋭とは言え、通常なら勘付かれても不思議ではない程の大胆な動き。
暗闇が集団の姿を隠し、豪雨が足音や雑音を消し、先の奇跡が魏軍の油断を生んだ。
まさに、陽軍を襲った天災を味方に引き込むかの如く、華雄達は進み続けた。
「着いたぞ、あれが魏軍の本陣だ」
「この天候だからか、見張りは少ないですね」
「殆どの天幕は明かりをつけていない、寝入ってるな」
「にしたって広大すぎる。この中から投石機を探すなんて……」
不可能だ。その言葉を、華雄兵は何とか飲み込んだ。
日中の戦いで犠牲を出しているとは言え、魏軍の戦力は未だ五万近い人数が居る。
それらの兵力で形成された本陣、広大なのは当たり前だ。
その中に、三百人程度の人数で飛び込み、投石機を探し出して破壊。
魏軍の追走を掻い潜って脱出する。
ごくりと、兵士の一人が喉を鳴らした。
此処に来る前は勇んでいた彼らも、魏軍の本陣を前にして顔を蒼くした。
それでも立っていられるのは、逃げ出そうとするものが居ないのは、やはり華雄のおかげだろう。
百戦錬磨の兵士達が縮みあがる光景を前にして、獰猛な笑みを浮かべていられるのは彼女くらいだ。
少なくとも、華雄以上に勇敢な武人を彼等は知らない。
彼女と共に居ると――戦意が湧き上がるのだ。
「行くぞ、手筈通り動けば問題ない」
『応!』
「きゅ、急報! 敵の夜襲です!」
「な!? 大橋に仕掛けて来たの!?」
「いえ、大橋からの連絡はありません。敵は我が本陣に突然表れました!」
「!」
「……大橋からでは無いとすると、大河を越えてきたようですね」
「見張りがいたはずでしょう」
「信じられませんが、それを掻い潜って近づいて来たと言う事に……。
損害と敵の規模はどのくらいです?」
「すぐに常備軍が迎撃にでたため被害は軽微です。敵の数は多くて三百程度かと……しかし」
「しかし?」
「敵の中に、我が軍の鎧を見に着けて居る者が居ると。激しい豪雨と乱戦で敵味方の区別が難航。
さらに、攻撃を受けた天幕の兵達も戦線に加わり、現場は大混乱です!」
「……常備兵以外の者達を下がらせて
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