第50話
[1/7]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
「初日は、何とか持ち堪えたわね」
「はい、この雨こそ魏国の天運でしょう」
魏陣営の天幕内、その中で華琳と郭嘉が、現状と今後の展望について話し合っていた。
「陽軍の様子は?」
「陣に引いた後は特に動きを見せません、月明かりも無いので視認は不可能ですが、
この雨天の中、行動をとる可能性は限りなく低いでしょう」
「低いだけで、無いわけではないのね」
「はい、でのすで橋を重点的に警戒させています。
一番怖いのは大炎での夜襲ですが、あの仕掛けさえあれば……」
「大炎の足を止め、予めそこへ座標を設定してあった投石機が猛威を振るう」
「その通りです」
「相手は今までに無い強敵、警戒しておいて損は無いわ。
他も抜かりは無いでしょうね」
「無論」
辺りを模した地形図、その岸辺に兵士駒を置く。
「大橋を使わず河を越えてくる“万が一”に備え、岸に見張りを配置させました。
異常があれば知らせが届き、待機させている常備兵三千が出向きます」
同日同時刻。郭嘉により岸辺に配置されていた見張りは、既に物言えぬ姿に成り果てていた。
「この悪天候の中じゃ、見張りも形無しだな」
「無駄口を叩くな、行くぞ」
見張りを片付けたのは華雄兵だ。船から先行した数人が、周囲を注意深く探っている。
見張り達が彼らを察知できなかったのは、暗闇と豪雨による視界不良以上に、油断していた面が大きいだろう。
無理も無い。岸辺に配置された彼らの目に映ったのは、一寸先さえ視認できない暗闇と、激しい豪雨、増水により激流の化した大河だけだ。
そんな中を船で、ましてや泳いで来る者が居るなど、夢にも思わなかっただろう。
故に、見張りは貧乏くじを引かされた自分達を少しでも労おうと、暖を取るための火をつけた。
華雄達は遠目でその灯りを確認、見張りの存在を確信し、泳ぎが得意な者達を先行させたのだ。
華琳や郭嘉の危惧は。
初戦の奇跡、疲れ、安堵といった様々なものが絡まり、末端の兵士まで届く事は無かった……。
「報告しろ」
「ハッ! 周辺に敵兵の姿はありません、隊を陸に移す好機かと」
「うむ、そっちは?」
「魏陣へと続く道に見張りが数名。ここに居た連中と同様、暖をとって油断しきってます」
「上々だ。手筈通り行くぞ!」
『ハッ!』
「お前、岸辺の見張りはどうした? 何故ここに居る!」
「あ、相方が足を滑らせて河に落ちたんだ。手を貸してくれ!」
「おいおい、急がないとまずいんじゃ……」
「チッ、わかった。さっさと案内しろ」
「いやぁ、案内せずとも――遭えるぜ」
「何
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ