第一章 天下統一編
第四話 初出勤
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も薄暗い。俺の扱いは理不尽過ぎる。
「もう遅いですし帰ってもいいでしょうか?」
俺は思い切って石田三成に言った。
「駄目だ。それが終わるまで帰ることは許さない」
石田三成はきっぱりと俺に言った。彼も俺が仕事を終えない限り帰るつもりはなさそうだ。俺は石田三成に恨みを抱きながら仕事を再開した。
「終わった」
俺は最後の一枚を積まれた仕訳の紙束の上に置くと文机の上に突っ伏した。
「仕訳が済んだら、こちらに持ってこい。確認する」
石田三成は疲労感を感じさせない声音で突っ伏す俺に声をかけてきた。俺は睡魔と戦いつつ必死に身体を起こししばし三成のことを見ていた。背を伸ばし正座し黙々と筆を走らせていた。
「何をしている。さっさと持ってこい」
こいつは何なんだ。俺は石田三成の仕事ぶりに戦慄を覚えてしまった。石田三成の語調に少し苛立ちが籠もっていたため、俺は渋々と立ち上がると仕訳と伝票の束を抱え彼の元に歩いていった。そして、石田三成の横に抱えていた物を降ろす。
石田三成は俺の置いた伝票と仕訳の束を手早く確認していった。時々、俺の書いた仕訳に修正を入れていく。全ての確認を終えると、俺に訂正した仕訳の紙の束を俺に差し出した。
「間違いがあった。訂正したから書き直してくれ」
「紙が勿体なくありませんか?」
俺にそれを書き直せというのか。数十枚はあるじゃないか。俺が書いた仕訳の総枚数からすれば大したものじゃない。でももう書き直す気分になれない。
「その無駄になった紙の代金をお前が払うか?」
石田三成は真顔で俺に言った。彼は本気そうだ。間違う度に代金を払わされたら堪ったものじゃない。今回の紙の枚数は大したことも無くても、今後もずっと代金を払うことになればそれなりの金額になるに違いない。
「冗談だ。紙の代金を払わされたくなければ書き直せ」
石田三成は真顔で俺にもう一度差し出した。彼の命令に従うしかない。
「わかりました」
俺は石田三成から訂正を受けた仕訳の紙を受け取り自分の机に戻ると書き直しはじめた。
石田三成は俺が机に戻ると彼の仕事を再開した。彼は陰日向無く怠けず仕事に没頭する。彼は秀吉が好みそうな人物だな。秀吉の弟・秀長が亡くなると、彼が秀吉の元で権勢を欲しいままになる理由も頷ける。
俺は石田三成に心の中で呪いの言葉を呟きながら仕訳を書き直した。
「石田治部少輔様、書き直しました」
俺は石田三成に書き直した仕訳を確認してもらった。
「藤四郎、全て問題ない。帰っていいぞ。出仕は今日より半刻(一時間)前に来るようにしろ」
石田三成の無慈悲な言葉に俺は完全に切れそうになった。
「どうした? 帰ってもいいぞ」
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