第一章 天下統一編
第四話 初出勤
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伝票を仕訳できた。俺は意気揚々と石田三成の元に向かった。
「石田治部少輔様、二枚の伝票を仕訳しました。確認をお願いいたします」
石田三成は仕事を中断し、俺から伝票と仕訳した紙を受け取り、それに目を通していく。石田三成は納得した様子で何度か頷いていた。
「藤四郎、お前は簿記が完全に理解しているようだな。勘定科目については独自の知識を持っているようだな。ここで使う勘定科目については、お前なら過去の帳簿を見れば分かるだろう」
石田三成は俺の書いた伝票と仕訳を見ながら俺に言った。彼は俺と中島の遣り取りに聞き耳を立てていたようだ。部下達の行動は終始監視しているようだ。
「お前に渡した伝票は責任持って自分の力でやれ。書類棚に置いている仕訳を綴じた帳簿は自由に読んでいい。お前の力だけでどうにかしろ」
石田三成は顔を上げ平然と俺に言った。彼は暗に「中島に聞くな」と言っていた。憶測だが中島の仕事が滞ると困ると考えているに違いない。三成の考えは理解できたが、それを納得できるほど俺は人ができていない。
新人の俺に初日から要求する仕事と思えない。俺は態度で怒りを表すことはせず、心の中で「パワハラ上司!」と罵り机に戻っていく。俺は石田三成の命令により、机で伝票を確認して書類棚の帳簿を読み漁ることを繰り返し行った。その行動を何度したかすら覚えていない。ただ言えることは凄く非効率だということだ。
石田三成の部下達は日が暮れるとさっさと帰り支度をはじめ帰って行く。彼らは俺の元に来て挨拶をし帰って行った。俺は彼らに笑顔で応対した。本当は恨めしい目で見てしまいそうだったが、彼らが俺を気の毒そうな目で見ていたため理性が働き大人の行動を取ることができた。俺が本当に十二歳の子供なら石田三成の横暴に堪えることは出来なかったことだろう。
日が完全に沈む少し前、小姓らしき者達が数人現れ部屋の灯りに火を点けて行く。俺はその様子を見る間も惜しみ筆を走らせていた。
「藤四郎、どの位終わった」
完全に日が落ちた頃、石田三成は俺に声をかけてきた。
「三分の一位は捌けました」
俺は石田三成を睨みつけそうな気持ちを必死に堪え彼のことを見た。
「中々やるな。初日にそれだけ捌けるとは。殿下がお前を買っていた理由も納得できる」
石田三成は感心した様子で俺の顔を見ていた。
「藤四郎、お前の歳は十二であったな」
「はい、石田治部少輔様」
「その歳でその器量とはな」
この流れは「今日はこれ位で帰っていいぞ」の展開に違いない。しかし、石田三成は何も言わず彼の席に戻り仕事を再開していた。俺は肩透かしにあい呆然と石田三成を凝視しながら落胆した。俺は徐に自分の周囲を見た。俺と石田三成以外に誰もいない。灯りがあるといって
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