第一章 天下統一編
第四話 初出勤
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止めた。ここで嘘をつくと更に墓穴を掘りそうな気がした。
「石田治部少輔様、お許し下さい。私に複式簿記の知識を得た出所は話せません」
「私に教えられないというのか」
石田三成は眉間に皺を寄せ憤り俺のことを睨んだ。
「誰に教わったか明かさないことを条件に複式簿記を教えてもらったのです」
俺は苦しい言い訳だがこれを通すしかない。この時代、複式簿記の知識が入る可能性がある組織は堺の会合衆くらいだろう。彼らが複式簿記の有用性に気づけば、自分達の利益のために複式簿記の知識を秘匿して独占した方が好都合なはずだ。三成が堺商人と繋がりがあったなんて知らなかった。
「分かった。これ以上は詮索しない」
俺が沈黙を守っていると石田三成はどういう訳かすんなりと引いてきた。さっきまでの剣幕とは真逆の反応であるため俺は拍子抜けする。だが同時に石田三成の反応に警戒感を抱いた。
「お前には私の仕事を手伝ってもらう。仕訳していない伝票がある。それを仕訳するのを手伝ってくれ。仕訳したものは私が内容を確認する。付いてこい」
石田三成は立ち上がり、右側の襖を開け隣の部屋に入っていった。彼の後を追って部屋に入ると整然と配置された棚に書類が納められていた。部屋の入り口近くに紙の束が整理されて床に山積みされていた。これを処理するのか。ちょっと伝票の数多すぎないか。
「お前の力を確認したい。これを頼む」
石田三成は紙の束一つを掴みとり俺に差し出してきた。千枚以上はあるんじゃ無いか。
「これは?」
「伝票だ。さっさと受け取れ」
俺は石田三成に促されるままに伝票の束を受け取った。石田三成は先に部屋を出て行く、俺も彼に付いていきながら元の部屋に戻った。
「藤四郎、お前の机はそこだ。必要なものは全部用意しているからそれを使え。最初の数枚の仕訳が済んだら私のところに持ってこい」
俺は部屋に戻るなり石田三成は俺の席を指し示した。そこは石田三成の席から一番近い正面右に位置する。書類部屋の直ぐ側である。
新人の俺の席位置おかしくないだろうか。俺は心の中で独白しながら席についた。俺の隣に座る同僚は二十代後半の冴えない男だった。だが、この中では最年長に見える。
「よろしくお願いします」
俺はとりあえず隣の男に挨拶した。
「小出様、よろしくお願いいたします。私は中島彦右衛門と申します」
中島は俺に対して丁寧に挨拶してきた。俺は机に座り初仕事を始めた。俺は伝票を確認すると勘定科目を何にすればいいか思い悩んだ。この時代と俺の前世の勘定科目が一致するか疑わしい。俺は仕事に没頭する中島に勘定科目のことを確認した。中島は俺の質問に丁寧に答えてくれた。お陰であっという間に石田三成から言われた二枚の
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