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トシサダ戦国浪漫奇譚
第一章 天下統一編
第四話 初出勤
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彼の部下達に声をかけた。彼らは石田三成の命令に従い筆を置き仕事を中断した。そして俺と石田三成を見た。
 彼らは石田三成を前にして緊張していた。それが傍目からでも分かる。俺に対して緊張している様子はなく、石田三成に対して緊張しているように見えた。
 先程までの俺と石田三成の会話の遣り取りで、石田三成が神経質な性格であることは理解できた。部下である彼らは石田三成に対して気苦労が堪えないに違いない。

「この者の名は小出藤四朗俊定という。今日から私の与力として働くことになった。それと藤四朗は北政所様の甥である。私は北政所様から藤四朗をよしなにと頼まれている。お前達は藤四朗が分からないことがあれば何でも教えてやれ」

 石田三成は真顔で彼らにに命令した。それを側で見ていた俺は言葉を失った。
 こいつ何を言っているの。皆さん凍りついた顔で俺のことを見ているぞ。俺の背後に天下人の正妻と上司の顔が見えたら怖くて堪らないだろう。俺の職場環境は居心地の悪いものになりそうだ。

「みんな仕事に戻れ。藤四朗、お前は何が出来るのだ?」

 石田三成は彼らに仕事に戻るように言うと、俺の方を向いて聞いてきた。

「算術と読み書きは問題無いと思います」
「思いますだと」

 石田三成は憮然とした顔で俺を睨みつけると、石田三成は自分の文机の上にある書類を一枚二枚と取り俺に手渡した。

「それを読んで見ろ」
「分かりました」

 石田三成が俺に渡した紙には日付と文字と漢数字が書いている。あれ複式簿記じゃないか。こんな時代にどうして複式簿記が使われているんだ。俺は戸惑った顔で石田三成のことを見た。俺は大学生の頃、資格に興味を持ち簿記二級を合格している。仕事は経理をしていたから何が書いているかは分かる。

「なんで複式簿記が使われているんですか?」

 俺は衝撃のあまり狼狽し石田三成に尋ねた。彼は俺の言葉に目を見開き驚いている様子だった。

「藤四郎、それの意味が理解できるのか?」
「天正十八年一月十七日、近江屋に米を売却した記録が書いています」

 現代の複式簿記のように横書きでアラビア数字も使っていないが、渡された二枚に分けて書かれている情報は間違いなく複式簿記だ。

「何故、理解できるんだ?」

 石田三成は俺を困惑した顔で見ていた。俺は驚きのあまり余計なことを口走ってしまったようだ。石田三成になんと答えようか。
 うろ覚えだが、複式簿記は十六世紀頃には西洋の商人の間で一般的な知識だったはずだ。だから、ポルトガル人やスペイン人を経由して複式簿記の知識が日本に入っていてもおかしくはない。ただ、その知識が日本で有用であると気づくかは別物だが、先見性のある日本の商人なら有用であると気づくはず。
 俺は石田三成に嘘をつくことを
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