第一章 天下統一編
第四話 初出勤
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。そして、彼の体つきは武芸と縁遠そうな優男だ。彼が賤ヶ岳の戦いで一番槍の手柄を立てたことに驚くと同時に俺にも戦功の機会の可能性はあると自らを奮い立たせた。
俺はふと石田三成の身体的特徴を思い出し、彼の頭の上に視線を向けた。石田三成の頭の形は木槌型と後世に記録されている。実際はどうなのだろうか。
「どうしたのだ?」
俺の視線を感じとった石田三成は俺に怪訝な表情を向けた。初対面の相手に頭の上を凝視されれば変に感じることは当然と言えた。本当のことを言うのもどうかと思うのでお茶に濁すことにした。
「石田治部少輔様の茶筅髷が見事でしたので目を奪われてしまいました」
俺は石田三成の髷から顔に視線を戻し、心にもないことを言った。だが、石田三成の髷が居様に均一に整っていたことは事実だ。本当の茶筅のように均一なバランスを保っていた。どうすればこんな髷になるのか少し興味が湧いた。
「お前には分かるか」
石田三成は仏頂面から笑顔に変わり口元に笑みを浮かべた。俺の咄嗟に繕った言葉は彼の琴線に触れたようだ。その証拠に彼は意味深な笑みを浮かべた。
「石田治部少輔様のような茶筅髷を結う秘訣はご教授いただきたいです。やはり鬢付け油が違うのでしょうか?」
俺はいつも自分で茶筅髷を整えているが、石田三成のような茶筅髷にはならない。石田三成は大名だから自分の小姓に手先の器用な者がいて、その者に髷を結わせているのかもしれない。
「何も特別なことはしていない。早起きは三文の得という。私は日の出とともに起き自分で髷を整えることが日課だ。人任せにせず些細なことも手を抜かない心積もりで生活していれば難なくできることだ」
石田三成は俺に真顔で淡々と当然のことのように言った。俺は石田三成が何故人から嫌われるのか何となく理解できた。
「石田治部少輔様の言葉に心から感銘いたしました。私も元服を機会に弛んだ気持ちを一新し精進しようと思います」
「美辞麗句は無用だ。そう思うなら行動に移すがいい」
石田三成は俺の返答に人を突き放すような物言いをしてきた。彼からは人間関係を円滑する気持ちが一切感じられない。
「精進いたします」
俺は大人しく短く返事した。すると石田三成は満足そうな表情に変わった。根が歪んでいるわけじゃなさそうだが、人格に問題がありそうだ。それと若くして秀吉の吏僚として権勢を得たことで傲慢な部分があるのだろう。
でも、今の石田三成は未だ秀吉の弟、秀長が健在だから絶対的な権勢を持っているとはいえない。
「殿下のために精進いたせ」
石田三成は一度言葉を切った。
「殿下からお前を与力として使えと仰せつかっている。お前達仕事の手を休めろ。紹介したい者がいる」
石田三成は俺から視線を
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