第百十九話
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きてない? 床屋とか……ああ」
「床屋か……」
バッチリとセットしてきた里香とは対照的に、多少は伸びてきたこちらの髪の毛を見て、里香は言葉を紡ぐ。しかして途中で何かを思い出したかのように、溜め息混じりにこちらの表情を見てきていた。
「あんた、そういや苦手なんだっけ。床屋」
「誰かも分からない奴が首筋に凶器持ってるんだぞ、むしろ何で平気なんだ」
「いやまあ、それはそうだけども……」
いつぞや里香にはもらしてしまった記憶があるが、俺には床屋というものが恐ろしくて仕方がなく。真剣そのものの表情で訴えたものの、どうにもあまり受け入れられてはいないようだ。
「じゃあどうやって髪セットしてんの、あんた」
「覚悟を決めて」
とはいえ行かない訳にもいかずに、それは精神の鍛錬だと思いながら――と、そんな益体もない話を続けながら、他に知り合いと会うこともなく、SAO生還者用の支援学校へと到着する。とはいえそこで別れることはなく、同じクラスに向かうだけだが。
「おはよー」
そしてどことなくざわついている教室に入ると、俺の隣の席であるにもかかわらず、何故か里香が自分の席とは違う方向に歩いていく。それを目で追いながらも、何か里香なりに用でもあるだろうと、そこで別れて自分の席に荷物を置くと。
「おはよう、翔希くん」
『おっはよー!』
「明日奈にユウキも、おはよ――!?」
自分の席に座りながら、既に来ていたらしい明日奈とユウキに挨拶して――というところで、その違和感に気づいて明日奈の方を二度見する。最近はシャムロックとのボス攻略のこともあって、ALOにログインすることが多くて気づくのに遅れたが、ここでは聞く事のない声が聞こえてきた。
『あはは、驚いてる驚いてる! ショウキのレアな顔、ゲットだね!』
「イェイ!」
どうやら聞き間違いではなかったようで、明日奈の肩に乗せられた機械から、よく知った声が響き渡った。特に驚いていない上に、いつの間にか来ていて明日奈とハイタッチをかましているところを見るに、どうやら里香もグルなようだ。
『うん、ショウキ。そうやって笑う時は笑う、驚く時は驚く、ってちゃんとした方がいいと思うよ?』
「そうそう。もっと明るくいきましょ?」
『でもボクに気づかないくらいリズの方を見てたのは、ちょっとポイント高いかなー』
明日奈の肩になんか乗ってても気づかないくらい、あたしのことしか見てない、なんてリズが言ってたけど、ホントだったね――などと、楽しげなユウキの声が、やはり明日奈の肩の上の端末から響き渡っていく。まだ目の前のことに理解が追いつかずに、顔を赤くしてこちらから目を逸らす里香を見届けながら、俺もまた羞恥によって手で顔を覆
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