第百十九話
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く刻まれて入っているのか、広がる生地にふんわりとした感触が伴っていた。
「炭水化物と炭水化物の相性って最強よね」
そしてたこ焼きに舌鼓を打っていると、母がこれ見よがしに父にご飯を食べさせていた。太るとかいい年して何してるんだとか、色々言いたいことはあったが、たこ焼きを口の中に入れた俺にツッコミは適わなかった。
代わりというべきか、用意されたご飯茶碗をしっかりと握り――
「行って来ます」
「はいはい、行ってらっしゃーい」
――妙に緊張した印象のある朝食を終えると、諸準備を終わらせ、SAO支援者学校に向けて歩を進める。例に漏れず、通勤や通学ラッシュの時間にピッタリ重なっており、こんな時は通勤しない父が羨ましくなる。家に併設された道場が勤務先なのだから、朝の電車には乗らずに済むだろう。
「……ん?」
そして歩くことしばし。腹が立つほどに晴天だが身が凍るほどの寒空の下、コートのポケットに入れていた携帯から、珍しく着信が来たと震えが伝えてきた。着信というのもこの時分に珍しく、手を強ばらせながら携帯を開く。
「……もしもし?」
携帯に表示された名前は非通知。また珍しいその事態に、一瞬だけ着信拒否が頭をよぎったものの、結局はその通話を了承する。すると電話先から聞こえてきた声は、見知った――聞き知ったと言った方が正しいか――声であったにもかかわらず、予想外の人物であった。
『ショウキか? スメラギだ、分かるか?』
「スメラギ? いや……分からないが」
電話先の相手は、あのシャムロックの副リーダーことスメラギ――と名乗ってはいたものの、当然ながらALOでのアバターとは声が違うので、電話先からでは判断出来ない。セブンのように歌手活動をするにあたって、公式で自らの声をサンプリングするならともかく、その助手であるスメラギはそこまではしていないようだ。
『ああ、分からんだろうな。信じてもらうほかない』
「……スメラギだとして。どうした?」
当然、声が違うことは向こうも承知のようだったが、そのもったいぶった言い方は間違いなくスメラギだ――と確信しながら、突然の電話の用件を促した。含めて、どうしてこちらの電話番号を知っているのか、ということも。
『まずはすまない。急用だったため、菊岡さんから電話番号を聞いた』
「あー……」
申し訳なさそうな声色のスメラギとは対照的に、こちらはその納得いく電話番号の入手先に、げんなりとした声を出してしまう。ジャンルは違えど同じVR空間に携わるものとして、セブンたちと菊岡さんに繋がりがあってもおかしくはない。
「それで、急用って?」
『ああ……お前を見込んで頼みがある』
普段に利用する駅が見えてきたこともあっ
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