33部分:第三十二話
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第三十二話
第三十二話 練習
といってもあくまで彼女の挑発には乗らない。ただ練習を続けるだけだ。
この日もそうだった。学校の音楽室で練習を続ける。
「あっ、いい感じね」
美樹が華奈子のダンスを見て言う。
「華奈子ちゃんそのステップいいじゃない」
「えへへ、そう?」
華奈子はその言葉に機嫌をよくする。
「うん、軽やかでね。いい感じよ」
「そう?それじゃ」
その言葉に機嫌を浴してさらにステップを踏む。
「どう、これは」
「いいわね、もっとよくなったわ」
「うふふ」
そう言われてさらに乗ってきていた。美奈子はそんな華奈子を横で見ていた。
「いい感じね」
「そうなの」
それを聞いて梨花が声をかけてきた。
「ええ。やっぱりうちのグループって華奈子の存在大きいじゃない」
「そうね」
この場合はヴォーカルというだけではない。彼女がグループ全体のムードメーカーとなっているからだ。これが大きいのである。
「そのヴォーカルが乗ってると心強いわ」
「そうね。けれど」
「何?」
「もう一人はどうなの?」
梨花は笑ってそう言ってきた。
「私!?」
「そうよ。クラウンのヴォーカルは二人」
「ええ」
これは彼女もはっきりわかっていることであった。もう言うまでもない。
「一人じゃ駄目でしょ」
「じゃあ私もってことね」
「そうよ。その笛」
梨花は美奈子のそれに言及してきた。
「吹き方変えたでしょ。さらによくなってるわよ」
「笛はね」
くすりと笑って述べる。
「一番得意な楽器の一つだし」
「自信あるのね」
「ええ、そういうこと」
にこりと笑ってこう答えた。
「自信があるからするのよ」
「そう。じゃあ任せるわよ」
「見ていて」
美奈子はクールな声で述べる。
「華奈子のダンスも私の笛もね」
「そうさせてもらうわ。じゃあ」
「今日もね」
そのまま明るく練習に入る。練習は順調に進んでいた。クラウンはその中で成長を続けていっている。そのことを誰よりもわかっていた。
第三十二話 完
2006・11・28
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