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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百九十五話 共同占領
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の提案を時間稼ぎに使う事は許さぬ』
「もちろんです」
スクリーンからレムシャイド伯が消えると、執務室の緊張も緩んだ。コーヒーを淹れようやく皆一息ついた。
「上手くいったのかな、トリューニヒト」
「少なくともレムシャイド伯は共同占領案に悪い感情は持っていないようだ、説得できたと思う」
私の問いにトリューニヒトが交渉を思い出すような目をしながら答えた。そしてホアンが言葉を続ける。
「後は彼がどの程度の影響力を本国に発揮できるかだが……」
「事が事だからな、楽観は出来ん。レムシャイド伯の影響力よりも本国の実力者達がどの程度理性的かだろう。面子で考えられたら受け入れられまい」
トリューニヒトの言葉にボロディン統合作戦本部長が厳しい声を出した。
「トリューニヒト議長、共同占領案が帝国に受け入れられなかった場合、艦隊は後退させますが宜しいですね」
「ああ、構わない。戦争はしない、これは君達との約束だからね。それと艦隊は直ぐ侵攻を止めてくれ。帝国の不信を買いたくない」
「承知しました」
ボロディン統合作戦本部長はコーヒーを飲み干すと執務室を出て行った。その姿にホアンが軽く苦笑する。
「トリューニヒト、君は軍に信用されていないな」
「これまでの事があるからな、仕方ないだろう。だが彼らは頼りにはなる。単純な主戦派や出世することしか頭に無い連中よりは、はるかにましだよ」
「信頼はこれから積み上げていけば良い。先ずは今回のフェザーンの件がどうなるかだ」
「そうだな、レベロ。君の言う通りだ。上手く行けば良いんだが……」
帝国から回答が来たのは翌日の十三日の事だった。執務室には前日と同じメンバーが集まっている。スクリーンに映るレムシャイド伯は沈痛な表情をしていた。余りよくない傾向だ。
「レムシャイド伯、帝国本国からの回答をお聞きしたい」
『その前にトリューニヒト議長、卿に確認したい事がある』
「なんですかな」
執務室の緊張が高まった。
『同盟は、いかなる意味でもフェザーンに対して領土的な野心を持たない、そう考えても宜しいかな?』
「もちろんです。我々はフェザーンに対して領土的な野心を持ちません。フェザーンが帝国内の一自治領だと言う事は分かっていますし、それを尊重します」
トリューニヒトが丁寧な口調で答えた。この答えが帝国本国からの回答に密接に関わっている事は間違いない。いかなる意味でも誤解が生じるような回答はすべきではない、そう考えたのだろう。レムシャイド伯がゆっくりと頷くのが見えた。
『宜しいでしょう。では帝国本国からの回答をお伝えする』
「……」
『トリューニヒト議長、帝国は同盟より提案のあったフェザーン共同占領案を正式に拒絶する。受け入れる事は出来な
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