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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百九十五話 共同占領
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い。そうなれば次に登場するのは帝国に強い敵意を持つ政権になるでしょう」
『私には卿らも十分に帝国に敵意を持っているように見えるが?』
レムシャイド伯が皮肉に満ちた口調でこちらを揶揄したがトリューニヒトは気にする様子も無く言葉を続けた。
「そうなれば先日の捕虜交換の合意などあっという間に吹き飛んでしまいますぞ」
『……捕虜交換の合意が吹き飛んで困るのは、帝国よりも卿らであろう、違うかな?』
レムシャイド伯が僅かな沈黙の後、低い声で脅すかのように凄んできた。
「確かに。しかし帝国も戦線を増やすのは望む所では有りますまい」
トリューニヒトとレムシャイド伯が視線を逸らすことなく睨みあう。
『……随分と汚いやり方ですな、トリューニヒト議長。卿らは帝国の苦境に付け込もうとしている様だが、後々つけを払うのはそちらですぞ』
「付け込もうとしているわけではありません。このままではお互いに困った事になると言っているのです」
『……』
「如何でしょう、我々はいがみ合うよりも協力し合うべきだと思いますが」
トリューニヒトが声を潜めて囁くようにレムシャイド伯に話しかけた。レムシャイド伯もトリューニヒトに合わせるように声を潜める。
『……と言うと』
「……フェザーンの共同占領」
トリューニヒトの言葉にレムシャイド伯が眉を寄せた。そして表情に苦味を滲ませ吐き捨てるように言葉を出す。
『馬鹿な、そのような事が可能だと思っているのか』
「我々はフェザーンの内政に関与するつもりは有りません。フェザーンはあくまで帝国内の一自治領です。我々が欲しいのは帝国と共にフェザーンを占領したという事実です」
『……卿らが欲しいのはあくまで共同占領という名だと言うのか?』
呟くような口調でレムシャイド伯が問いかけてきた。
「その通りです。実はそちらで取っていただいて結構。我々もルビンスキーには何度も煮え湯を飲まされている。フェザーンが本当の意味で中立を守るように帝国と同盟で共同出兵したと言うのはおかしな話ではありますまい」
『……』
「共同占領にはそれなりのメリットもある。帝国に同盟が協力しているとなればフェザーンの住民達も無用な抵抗はしないでしょう」
スクリーンに映るレムシャイド伯が微かに冷笑を浮かべた。
『いささかそちらに都合の良すぎる理由のようだが?』
「そうかもしれませんな、しかしいがみ合うよりは良い、そうではありませんか?」
『……まあ、確かにそれは有るか……』
「如何です? 共同占領、受け入れて貰えますかな?」
レムシャイド伯は少しの間、視線を伏せて考えこんだ。執務室の緊張が更に高まる。
『……私の権限では答えられぬ、本国に話してみよう。但し、そちらの艦隊が現在の位置に止まる事が前提だ。こ
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