30部分:第二十九話
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第二十九話
第二十九話 対面
美奈子の提案は華奈子だけでなくクラウンの面々にも伝わった。そしてまずは『無視』ということでバンドとしての方針も決定したのであった。
「そういうことで」
「じゃあ」
六人はそれぞれ頷き合う。そしてこの日の路上ライブに入ったのであった。
「おっ、今日はクラウンか」
「相変わらずいい線いってるな」
客達がそれを見て言う。やはり彼女達の人気は確かなものになってきていた。
クラウンはそのまま演奏を続けている。そこに一人の少女がやって来た。
「来たわね」
美奈子が最初に気付いた。フルートを吹きながら彼女を見やる。
そこにいるのはその雅美であった。六人をじっと見据えている。
六人もそれに気付いている。だがあえて無視をしている。
(無視するつもりかしら)
雅美もそれを見ていた。
(まずは。それなら)
彼女もそれで引き下がるつもりはなかった。不意に背中に背負っているギターを取り出してきた。
「おっ、今度は雅美ちゃんか」
「今日は色々来てるな」
「ラッキーだな。へへっ」
中には能天気なコメントを出す者もいる。だが雅美の目は本気だった。
演奏をはじめる。その目はずっとクラウンを見据えている。
だがそれでもクラウンは雅美を見ようとはしない。無視を続けている。
(ねえ美奈子)
華奈子は新しく覚えたテレパシーの魔法で美奈子に声をかけてきた。
(あの人よね)
(そうよ)
美奈子もまたテレパシーを使ってそれに応える。
(まさかいきなり来るなんてね)
(予想はしていたわ)
(そうなの)
(ええ。それでわかってると思うけれど)
彼女は心の中で華奈子に言う。
(動いたら負けよ)
(わかってるわ)
華奈子もそれはわかっていた。心の中で頷く。
(それじゃあこのままいつも通りね)
(そう、いつも通り)
(歌っていくわよ)
(ええ)
二人はそのままデュエットに入る。だが雅美は見ない。
「そうくるのね」
雅美もそれを見ていた。
「無視するというんなら」
彼女はプライドが高かった。そのプライドを刺激されて燃え上がってきたのだ。
「こっちだって」
演奏に力を入れていく。歌はかなりのものだった。そこに。
魔法も。まずは火を出してきた。
「むっ」
(駄目よ)
反応を示した華奈子に美奈子が囁く。今戦いがはじまった。
第二十九話 完
2006・11・15
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