暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第154話 唯ひとりの人
[4/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
もする。
 それは――

「人間とは自分で考えて行動をする存在。元々、監視と観察を行う為に作り出されたわたしは人間とは似て非なる存在でしかなかったと思う」

 もし、朝倉涼子暴走事件を事件が起きる前にわたしの手で阻止していたとしたら。もし、終わらない夏休みを、ループが始まる前の段階でわたしの手で阻止していたとしたのなら、果たして思念体がどう言う対処をしたのかと考えると――

 そこまで口にしてから、氷空に打ち上げられる色彩に向けて居た視線を俺へと移す彼女。
 確かに、俺は彼女が自ら判断して行動する事を推奨して来た。更に、彼女の判断に異議を唱えるにしても、その理由を明確に言葉にして伝えて居たと思う。
 少なくとも理由もなく、ただ命令する……などと言う事はなかったはず。もし、自分の上司がそう言うタイプの人間だったらどう感じるか。どう考えるか、と考えると、俺自身が間違いなく反発して言う事を聞かなくなる可能性が高いから。
 強い不満を感じて、俺自身が陰気に染まった存在へと変わる可能性が高くなるから。

 ただ、もし、彼女が思念体の命に従わず、数々の事件自体が起きる前に対処をして終った場合は……。
 少し思考を回らせる俺。
 彼女、長門有希の能力から考えるのなら、事件が発生する前。もしくは小さな芽の内に摘み取って仕舞う事は容易い事だったでしょう。少なくとも彼女が挙げた事件は、今俺や彼女が関わらされている事件と比べると神や悪魔などの神霊が関わっている……表向きに関わっている事件ではないので。
 そして、その場合の思念体の対処も、普通に考えるのなら何の御咎めもなかった可能性の方が高いと思う。

 何故ならば、思念体の目的が進化の可能性の模索であったはずだから。
 自らが創り出した人工生命体が、自分たちの命令に従わず、独自の判断で事件に対処する。その方が正しいと考えて。
 これは、彼女に初めからそう言うプログラムを施していないのなら、新たな可能性を示す物だと思われる。プログラムにない行動を開始する人工知能。これを異常行動と取るか、それとも新たな可能性と取るかは微妙な処だけど、それでも、本当に新たな可能性を模索しているのなら、これは簡単に見過ごす事が出来ないはず。
 但し、これはハルヒを観察する理由に欺瞞がない場合に限られるとは思うのだが。
 もし、それ以外の理由があるのなら、おそらく、そう言う思念体の意志に背くような行動を彼女が行おうとした瞬間、彼女の情報連結の凍結作業が為されて終わったでしょう。
 そして、おそらく思念体の目的は進化の閉塞状態の打破ではない。

 何故ならば、もし、それが本当の目的ならば、彼女が十二月に起こす事件と言うのは正にその目的に合致する事件。本来、自らたちが使う為に作り出したはずの道具が意志を持ち、|
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ