第6章 流されて異界
第154話 唯ひとりの人
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味の言葉だと思うから。
「もし、有希が人間ではないと言うのなら、その有希よりも更に人間離れした能力を行使する俺は、人から離れた化け物以外の何者でもなくなって仕舞うでしょうが」
本来ならかなり深刻な内容を薄める意味での少し茶化した口調で。
先ほどまでとは逆の形。彼女が冬の花火をその瞳に映し続け、俺が彼女の瞳に映るそれらを見つめる。
もっとも、俺の瞳に映ったそれらはより喜劇の方向へ。彼女の瞳に映ったそれは悲劇の方向へとシナリオを進めて行く可能性も高いのだが……。
「人が人である証は、心の在り様だと俺は思う」
ただ、何時までもオチャラケた雰囲気では俺の言葉に説得力が産まれない。メリハリを付ける意味でも少し真剣な表情で、言葉を紡ぐ。
そう。他者を害して平気でいられるような人間。他者を陥れて平気でいられるような人間は例え生物学的にホモサピエンスであったとしても、ソイツは既に人間ではない。
翻って有希を考えてみると、
「あの時、有希は俺と契約を交わす事が出来た」
俺は中庸よりは少し……いや、今はかなり光寄りだと思う。少し闇に染まった……と言う程度でも、もしかすると新たな契約を交わす事が出来ない可能性もある式神使い。その俺が契約を交わせた以上、更に、有希と契約を交わして以後に俺の方に何等かの不都合。例えば、陰気が溜まる事により病を得る、などと言う事がない以上――
「有希は人間。それも、ちゃんと光の方向を見ている人間だと証明出来ると俺は思うぞ」
何故、彼女が今、こんな事を言い出したのか不明。今までの彼女の言動などから、彼女に何らかの思惑があっての発言だとは思うのだが、そう言う負の思考にもし、現在の彼女が囚われているのなら、其処から立ち上がる手助けは必要だと思う。少なくとも、ひとつの場所で堂々巡りと成りかねない思考など百害あって一利なし、だ。
他人が聞くと……例えば、アラハバキ召喚事件を起こしたあの犬神使いの青年が聞けば間違いなく違う答えが返って来るであろうと言う俺の答え。オマエも、その女も人間などではなくバケモノそのモノだよ、……と言われる可能性の方が高い内容。もしかするとこの言葉は有希に聞かせる為と言うよりも、俺自身にそう思い込ませる為に発した言葉なのかも知れない。
しかし――
「あなたがわたしを助けてくれたのは何故?」
相変わらず、陽の気……おそらく、喜に分類される雰囲気を発しながら問い掛けて来る彼女。但し、その口調や表情から、今の彼女の心情を理解する事は俺以外には出来ないでしょう。
う〜む、どうも彼女の思惑通りに会話が進んでいる事が彼女の機嫌が良くなっている理由なのでしょうが、この会話の行きつく先が分からないので……。
「俺が学んで来た退魔師の基本から、あの
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