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魔法少女リリカルなのは ViVid ―The White wing―
第三章
二十九話 オブザーバー
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のの、多くが初手から仕掛けに行くことが多いIMの試合においては少しばかり珍しい程静かであり、しかし同時にそれが緊張感を生んでもいる。その空気がたっぷりと五秒ほども場を支配して、唐突に……

「……ッ」
[Acceleration]
クラナが動いた。

「!?」
一瞬、観客席にいた全員がクラナの姿を見失った。当然だ、踏み込んだ本当に次の瞬間には、クラナはレイリ―を殴る体制に入っているのだから。ちょうど、先日ミウラが行った踏み込みに近いが、あれが踏み込み勢いに任せた跳び蹴りであったのに対してクラナの場合しっかりと地に足が付いた状態で、ほぼ教科書通りに打たれるフックだ。つまるところ、必殺技でもなんでもなく、単なる挨拶変わりと一撃としての踏み込みであり、一撃。

「……!」
「ふっ!」
しかしそれを、撃たれた対象は躱してみせた。滑るように後方へと移動し、拳が命中するぎりぎりのところでその範囲内から逃れる。

「あ、あぶ……」
「(移動魔法……)」
即座に、クラナがその姿を追った。後方に向けて10センチほど浮遊したまま飛び退っていくしかし速度自体はそれほどではない。問題なのは後方に下がられたままだと打撃は威力が減衰する。であれば……

「アルッ」
[Third gear unlock.]
[Acceleration]
更にクラナの身体が加速する。ブレるようにかき消えたクラナの身体が、後方に移動していたレイリ―の脇を駆け抜けた。

「ッ!」
「ふっ!」
クラナの気付いたレイリ―が対応しようとするが、いかにも遅い振り向いた時には既に顔面に上段蹴りが炸裂している。しかし……

「なっ」
「…………」
驚きの声を上げたのは、クラナの方だった。確実に顔面をとらえたはずの蹴りが、彼の姿をすり抜けたのだ。

「(幻術か!)」
[(これはまた……)]
IMで、幻術使いはそれほど多くない。シャンテのような特殊な場合を除いて、直接的なダメージの要因になりにくいためだ。しかし……

「ッ!」
後方から気配、数は……

「(三人!?)
「ふっ!」
「やぁっ!」
「てぇっ!」
振り向くと、そこにクレヴァー・レイリ―が三人いた。真後ろと左後方、右後方から一気に三人、腕に緑色の細いとげのようなものを纏わせ、それを一気にクラナめがけて突き出してくる。不意を突いた一撃だ。どれか一つが本物だろうが、全員から同じ気配がする。

「(どんな仕組みか知らないけど……!)」
通常の幻術だけでは気配まではコピーできないと踏んだのだが、そういうわけでもないらしい。しかしいずれにしても……

「(この程度……ッ!)」
三体程度ならば、今のクラナであればものの数ではない。中央の一体にめがけて突き込みをぎりぎりでかわし殴り飛ばし
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