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魔法少女リリカルなのは ViVid ―The White wing―
第三章
二十九話 オブザーバー
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「ふっ……ふっ……ふっ……ふっ……」
ミカヤとミウラの壮絶な試合を含む、女子の部、一回戦と二回戦の翌日。週末の二連休を利用して行われる試合日程の内、この日は、IM予選大会、男子の部の、エリートクラス一回戦、二回戦が行われる日だ。
いつものように、少し冷たい空気、いつものように、じんわりと身体を濡らす汗。いつものように、少しだけ掛かる靄を切りながら進む少年は、すこしいつもの違う場所で、ゆっくりと立ち止まる。

彼の家の近所にある、市民公園。その公共魔法練習場。
かつて妹に懇願されてその格闘戦技の指導を行った場所に、彼はどこか踏みしめるように立ち入り、その中央に立つ。

「…………」
黙って構えを取る彼の周囲で、ある種の揺らぎのような、魔力の流れが発生する。
それは彼が魔法陣を展開した気配である、が、その陣を余人が目にすることはない。

「……ッッ!!」
短く吐き出された息と共に、右の拳がブンッ!と突きだされ、低い破裂音と共に大気を揺らす。
ただ一発、その一発で彼は自身の状態を確認すると、拳を収めて、呟いた。

「うん……行ける」

────
同日午前 トライセンタースタジアム 関係者入り口前

「……行けそうだな?クラナ」
「……はい」
ノーヴェの言葉にコクリとうなづいて、クラナは目の前にいる面々を見る。アインハルトを含めた、チームナカジマのメンバーたち。来週には試合があるというのに、全員がその場に集まっていた。

「クラナ先輩、頑張ってください!!」
「観客席で、思いっきり応援しますから!!ねっ!アインハルトさんっ!」
「えっ?あ、はい!」
「お、なんだお前らの応援が聞けるなら俺も早く試合して──[少女の応援目当てですか、崇高さのかけらもない俗物精神お見事ですマスター、そこまでいくといよいよもって人としての尊厳が必要なくなる日は本格的に近そうですね。いいえ、むしろ今すぐ直ちにはく奪されないこと自体がおかしいのかもしれません]あー!そうでもねーわー!マジ練習時間伸びてよかったわー!!」
いつも通りの一人と一機に、メンバーが朗らかに笑う。それまで苦笑とも失笑ともつかない笑い声だった笑顔も、ここまでくると日常の一部、いつも通りの態度は、えてして人を安心させるものだ。まぁ……

[あぁ、我がマスターの事ながら本格的に将来が心配になってまいりました。局員を呼びましょうか?マスター]
「いや何のために!?それ俺の将来のためじゃないよね!?むしろ俺の将来それで潰れるよね!?」
「「「(あぁ、残念だなぁ)」」」
相変わらず呆れ気味になってしまうのも事実なのだが……それもまた、いつも通りだ。

「あの、お兄ちゃん」
「…………?」
とことこと近づいてきたヴィヴィオが、首を傾げるクラナに両手で円柱状の物体
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