暁 〜小説投稿サイト〜
キミトオク
五月晴れ

前書き
 思い立ってみたらいつの間にか寒い冬も明け、雪解けが春の訪れを呼び寄せる。だが僕の心の中はまだまだ冬真っただ中だ。なぜかって?あの日あの時あの瞬間に失ったものはその時から自分を凍結させてしまっているのだ。冷凍庫の中にひっそりと忘れられたものと同じように固まったままだ。何度も何度も苦しくて、死にたくなってとにかくこの現実から逃げたくなったのだ。

世間では、桜が咲いただの、入学式だの言われているが僕はこの閉鎖空間に閉じこもったままだ。あるものはパソコンと一部の生活用品くらい。テレビとか別に興味がなかったのでこの部屋にはない。てか、テレビやらラジオやらの情報収集の道具はパソコンがあるから十分だ。こんな閉鎖空間に閉じこもって早半年くらい経つのだろうか。最後に外に出たときはまだ太陽が照りつける、蝉の声が五月蠅いくらいまるでそこらじゅうでオーケストラでも開催しているようにやかましかったのだ。それが今じゃ今は風が気持ちいいとても心地いい春になっているのだから。
 でも、僕にはその春の優しさが逆に辛さを引き寄せてくる。優しくされればされるほどつらく辛くなっていくのだ。苦しい辛い死にたいのコントラストは負の連鎖を呼び寄せる。何回も何回もこの世を去ろうと考えたのだがそんな勇気も活力もない。あの夏の蝉の抜け殻の様な人間だ。中身は空っぽ。ただ、あの時失った僕は一生帰ってくることはないのはわかる。『きみは誰何だ?』『誰なんだ。』こんな自問自答を繰り返すだけなんだ。ゆらゆら揺れてる自分の存在。ウザすぎる。
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