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第二十六話
第二十六話 心
「大事なのは心なんです」
「心なんですか」
「はい」
先生のにこりとした笑いはそのままだった。
「歌も魔法もそうなんですよ」
「先生がいつもお話していることですよね」
華奈子はその話はいつも聞いているのでわかっていた。
「歌もなんですか」
「そうですよ。だって人が使うものですよね」
「ええ」
華奈子は答えた。
「だからですよ。人が使うから」
「心を込めないとですか」
「わかりましたか?」
「心を込めてしっかりと」
「そうすれば歌だってよくなりますし」
「魔法も」
六人は先生の話が何となくわかってきた。難しいようでそうではなかった。
「心を込めればどんなものでも立派になるんですよ」
「どんなのも」
「皆さん、魔法はずっとやっていれば上手になります」
先生がいつも言っていることである。
「歌も同じなんです。けれど」
そしてこれもまた先生がいつも言っていることである。
「心がこもっていないと駄目なんです」
「心が」
「それはよく覚えていて下さいね」
「はい」
「それじゃあ」
「歌も魔法も人に見てもらう、聴いてもらう」
この場合の魔法はこうなるのだ。
「それをいつも心に留めてしっかりとやっていくんですよ」
「ええ」
「じゃあ技術とかは」
「勿論それも大事ですよ」
先生は美奈子に答えた。
「けれどそれは後でいいんです」
「そのうち身に着くからですか」
「そうです」
やっていれば上手くなるとはこのことなのである。先生は実は生徒達にはそんなにテクニックは教えたりはしない。少し教えて後はどんどんやってみせるのだ。経験と練習を重視しているのだ。これがこの先生の教え方であり魔法に対する考えなのである。
「よいですか、それで」
「はい」
「心ですか」
「何でもそうですけれどね」
「じゃあさ皆」
華奈子が他の五人に対して言う。
「心を込めていこう、真剣勝負でね」
「そうだね」
「手抜きなし、それで情熱を込めて」
「やろう」
「よし!」
六人はまた魔法と歌について学んだ。クラウンも少しずつ成長していくのであった。
第二十六話 完
2006・11・5
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