Lv36「猫大統領、寿司を食う」前編
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あげるにゃ。
近海で取れた油モリモリの高級マグロで美味しいのにゃ」
そう言って、ニキータはマグロの寿司を床へと放り投げて、価値を生ゴミへと変えた。かなり勿体ない。
甥は、自分を拘束し、食べ物を粗末にするニキータを憎悪し睨み、叫ぶ。
「叔父上は、なぜっ!人類の敵に共産国を売ったのですか!
これは全世界に存在するっ!生者への裏切りです!」
「にゃにゃにゃ。
商人はお金を払ってくれるお客さんを大事にして当たり前にゃ。
共産国は貧乏人だらけで、市場としては美味しくないのにゃ。
帝国は世界基軸通貨を持っている上に、市場が超広大で美味いにゃー。
計りの天秤にかけなくても、それは明らかにゃ」
「ですが!あの地では富は平等に分配されている理想郷――」
ニキータは、高いマグロ寿司を投げようかと一瞬思ったが、勿体なくて安いサンマ寿司を甥に投げつけた。
そして投げながら思った――この寿司。サンマを熟成させて、酢で完璧に仕上げた美味しいサンマだから、やっぱり高級品だ。勿体ない。
でも、折角、床に放り投げたのだから無駄にはしたくなかった。
「食べ物がもったないから、その寿司を食ってろにゃー。
それに、共産主義で飯は食えないにゃー。
甥っ子殿は資本主義の恩恵を得て、大学に通えて、ゴージャスな学生ライフを送って幸せだったはずにゃ?
なんで貧乏人がハマりそうな思想に共感するにゃ?
何か不満があるのにゃ?」
「富が偏っている商国の社会は完全に間違っているからだ!
富が平等に分配されない社会は、大勢の不幸な人を産む!
俺はそんな社会は嫌だ!
叔父上!考え直してくれ!」
甥が叫ぶ。寿司は床に落ちたままだ。
商人の子供としては、これはどうなのだろうかと、ニキータは不安に思う。
わざわざ大金を払って、秘密を守ってくれる板前を呼び、作らせた寿司が勿体無い。
ニキータは床に落ちたマグロ寿司とサンマ寿司を拾い、食べながら、甥に金持ちの倫理を『適当に』説明してやった。
「にゃー?
資本主義の神様が言っていたにゃー。
神の見えざる手が、富を再分配してくれるからワンチャンスって言っていたにゃー。
問題ないのにゃー。
本当に、神様ってありがたい存在にゃー」
「そんなものは存在しない!」
「甥っ子殿が着ている衣服は、誰のお金にゃ?
一族が出した利益で買った高級毛皮コートを誰の金で買ったにゃ?
資本主義の神様と一族に、感謝すると良いにゃー」
「……」
「お前が着ている衣服、食べ物、家、女友達……それらは全て、吾輩達が与えたものなのにゃー。
どうやら無駄な投資になったみたいで残念にゃー。
民事訴訟を起こして、全財産を剥奪して、一族から追放にゃー。
明日からマグロ漁船にでも乗って頑張る
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