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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百九十四話 囚われ人
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キルヒアイスはアンネローゼが薬を持っているとは思っていなかった。多分オーベルシュタインはあの二人に個別に接触したのだろう。アンネローゼもキルヒアイスも相手が陰謀に関与しているとは思わなかったに違いない。お互いに自分とオーベルシュタインのみが知る事だと思っていた……。
アンネローゼはキルヒアイスではなくラインハルトが陰謀に関与していると思ったのだろう。彼女がキルヒアイスに連絡したのはそれが理由だ。キルヒアイスならラインハルトを止められると思った。しかし現実にはキルヒアイスの背中を押すことになった……。アンネローゼもキルヒアイスもつくづく謀略には向かない。
『それにしても伯爵夫人が陛下の暗殺を承知するとは……、夫人は陛下を恨んでいたのかな』
「……」
キスリングが首を振って問いかけてきた。答えは……必要ないだろう。思うところはあるが、正しいかどうか……。
男爵夫人邸で会った時、夫人には陛下を恨んでいる様子は見えなかった。しかし愛してはいなかったのかもしれない。十五歳で後宮に入れられ四十近い歳の差がある男の愛妾になったのだ。愛情を持てと言う方が難しいだろう。
暮らしに困らなくて済む、弟の将来を頼める……。飲んだくれの父親を持った彼らの将来は決して明るくは無かったはずだ。その事は誰よりもアンネローゼが分かっていたに違いない。愛情は無かったかもしれないが、感謝はあったのかもしれない。ただ、それも自分の身を犠牲にしたうえでの感謝だ。有るとしても屈折したものだったのではないだろうか。
自分の人生は十五歳で終わった。そう思ったからこそ彼女はラインハルトとキルヒアイスが自由に生きる事を望んだ。彼女にとってラインハルトとキルヒアイスは生きる希望だった……。
十年前からラインハルトとキルヒアイスの時間は止まった。ただアンネローゼを救うために生き始めた。だがそれはアンネローゼも同様だったのではないだろうか。彼女は十年前から二人の成長を見守るだけの女になった……。
ところが俺が現れた事で変化が生じた。ラインハルトの立場が徐々に悪くなり最終的に排除されそうになった。アンネローゼは話が違うと思っただろう。十年前に自分の未来を奪い、今自分の希望を奪おうとしている。許せないと思ったのかもしれない。そんな時にオーベルシュタインが接触してきた……。
ベーネミュンデ侯爵夫人か……。侯爵夫人がアンネローゼを憎んだのはアンネローゼが皇帝を愛していない事に気付いた所為かもしれない。彼女から見たアンネローゼは自分の心を隠した不気味な女に見えたのではないだろうか。
そしてアンネローゼの心が皇帝ではなくラインハルトに向かっている事にも気付いたろう。だから彼女はアンネローゼをラインハルトを排除しようとしたのかもしれない……。心を隠して皇帝の傍にい
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