Lv33「狐娘とテレビと児童車」中編
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ーニャンなら、可愛い狐を見て抱きついてモッフフ。
美味しいアルバイトがあれば、笑顔で接客してモッフフー。
貧乏だなぁと感じた時は、元気を失って、もっふぅ……
時と状況で、人は多彩な顔を他者に見せる。
ワルキュラも恐らく――大量虐殺を平然と行える自分と、日常生活を平和に謳歌する自分。その両方の性格が共存しているのだろう。
『大人気!ワ●キュラ人形!
サンドバックとして大人気!君もこれを殴ってストレス解消!
なお、これは現実のアンデットと一切関係がありません!』
「ワルキュラ様……でも、死んだ人たちを拘束して働かせるのは間違っているよ……。
こんなの神様でもやっちゃ駄目な事だよっ……」
キーニャンは、部屋を出て、学生寮の倉庫から鉄製のハンマーを借りて、テレビの前に立つ。
息を大きく吸い込み、錆びが目立つハンマーを高く構えた。
『緊急ニュースです!
ワルキュラ様が、飢饉で困っている旧人間王国に寄付なされました!
帝室収入の1割を寄付するとの事です!なんと寛大なのでしょうか!』
「間違いは正さなきゃ……!
哀れな魂を解放するよっ……!」
自分の言葉に酔って、テレビの内容を聞いていないキーニャン。
その右手のトンカチが勢いよく振り下ろされる。
テレビの真ん中がその衝撃で大きくヘコみ、機械部品がはじけ飛ぶ。
キーニャンは何度も何度も、目を瞑ってテレビを叩きまくる。
テレビの中で、ワルキュラが骸骨顔を晒して登場して演説をやっていたりするが、そんなのは無視だ。
『不幸な事故はあったが、被災者は全員、骸骨になって生きて――』
バキャーン! テレビに設置されたバッテリーが、火を吹き上げた。このままだと学生寮が火事になって、重犯罪者待遇で処刑されちゃう。
キーニャンは慌てて、飲みかけのコーヒーミルクをぶっ掛ける。
火は白い煙をあげて鎮火し、テレビは茶色の液体まみれになって、ガラクタと化す。
キーニャンは仕事をやり遂げた顔で――呟いた。
「あの世でゆっくりしていってね……。
もう二度と、ワルキュラ様に捕まっちゃ駄目だよ……もっふふ」
そして、満足しながら、こう思った。
この呪いの箱の残骸。どうしよう。
次、ワルキュラ様が来た時、テレビが無かったら私が代わりに殺されて、箱の中に封じ込められるのでは?
「もっふぅ……」
狐娘は場に立ち尽くした。
時間を浪費して30分が経過すると、扉からノックする音が聞こえる。
骨の手で、木を叩く独特な音だった。明らかに部屋の外にアンデットがいる。
「も、もっふぅ……?」
「俺だ、ワルキュラだ。色々と説明を忘れてたぞ
バッテリーを充電する時は、俺の魔力を使う必要があるのだ」
悪の帝王が、キーニャンのすぐ傍に迫ってきて
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