Lv32「狐娘とテレビと児童車」前編
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これはバッテリー付きの小型テレビだ。
燃費が良くて、長時間保つから経済的だぞ。
ビンゴ大会の商品なのだが、既に大型テレビが宮殿にあってな。
要らないから持ってきた」
「テ、テレビ!?」
その恐ろしい単語には、聞き覚えがある。
確か、テレビとは……人間の魂を封じ込めて、24時間労働させる拷問アイテムの名前だ。
アンデット達を喜ばせるために、必死に箱の中で芸をやらされて、死後の安寧すら奪われるという。
無論、無報酬で無休な超絶ブラック企業待遇だそうだ。
「このスイッチを押せば、電源がonになって映像が見れるのだ。
使い方は単純だから、やりながら覚えれば良い」
そう言って、ワルキュラはテレビの右下についている紅いボタンを押した。
暗いガラスに、大勢のゾンビの顔が投影される。
大都市で腐敗したゾンビが、人を食い荒らし、悲惨な悲鳴が部屋に響き渡る。
『だずげでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』
『やべでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』
『パルメザンチーズぅ!!!』
そこでは生きている人間は、ただ食われるだけの肉に過ぎなかった。
走り回る腐った『元人間達』で、大都会は汚染され、埋め尽くされている。
(こ、これは、まさか……人間王国で行われた大量虐殺の光景っ……!?)
完全に人の所業ではない。
悪魔、それも神を冒涜する事を目的にした地獄の宴だ。
ワルキュラの悪意は、見るだけで吐き気を覚えて、狐の尻尾がブンブン動く。
「おや、ゾンビ映画だったか?
これは若い娘に見せる内容ではないな、うむ」
ワルキュラがテレビの真ん中にあるボタンを押して、別の映像を映し出した。
キーニャンは、先ほどの光景を忘れられない。
というか、今日は悪夢にうなされて、寝れそうにない。
自分がコーヒーミルク飲んで平和を満喫している間に、人間王国の皆が、ゾンビとなり、餌となり、無残に腐り果てた死体となったのだ。
そう思うと、狐耳が下に垂れて、寒気がしてきた。
「キーニャン。テレビは付けっぱなしにすると、電力を消費するから、テレビを見ない時はスイッチを押して、画面を消すんだ。
わかったな?」
「も、もっふぅ……」
なんと返答すれば良いのか、発展途上国暮らしのキーニャンには分からない。
死をもたらす大魔王を説得する方法も、思いつかない。
ホラー小説に登場しそうな、怖い箱をどう処分すれば良いのだろうか?
そうやって狐娘がモフモフ悩んでいると、ワルキュラが――
「来て早々悪いが、俺は国に帰らないと駄目なのだ」
「もっふぅ?」
「どうやら、俺を暗殺するために、刺客が放たれているらしい。
同じ場所に長居すると、キーニャンに迷惑がかかるかもしれない。すまんな」
「あ、はい、分かりました!
お気をつ
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