第三章
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「番犬をしてもいい」
「いいことばかりね、ただ」
「ああ、どうもね」
ここでだ、ハンスは少し苦笑いになって言ったのだった。
「ダイアは気が弱いな」
「それもかなりね」
「身体は大きいんだがな」
大型犬のセントバーナードだがその中でも特にだ、ダイアは大柄で如何にも強そうである。しかしその外見とは違いだ。
「弱いな」
「小犬に吠えられても逃げるし」
「泣きそうな顔でな」
「それもチワワとかに」
「勝てるだろ」
体格的にというのだ。
「セントバーナードで相手がチワワなら」
「どう考えてもね」
「それが吠えられたら逃げて」
「フリッツ以外の子供からもな」
「逃げるわね」
「触られるのが嫌らしいな」
その子供達にだ。
「だからだな」
「そうみたいね、フリッツには懐いてるから平気だけれど」
「それでもな」
「子供も苦手で」
「喧嘩もしなくてな」
小犬に吠えられて逃げる位だから喧嘩なぞ出来る筈がなかった。
「ちょっとした物音でびくりとなって病院も怖がって」
「病院の前に来たら逃げようとして中に入ったら固まって」
「帰ろうって目で訴えてくるしな」
「弱いわね」
「ああ、かなりな」
「我が儘なところもあって」
ヨハンナはダイアのその一面も話した。
「行きたく道は行かない」
「テコでも動かないな」
「引っ張ったらね」
「嫌そうな、悲しそうな顔で抵抗するな」
「そこも困ったところね」
「ものぐさだしな」
ハンスはこの一面も指摘した。
「基本」
「一日二回の散歩以外は動かなくて」
「いつも中で寝ているな」
空いている倉庫を家にしている、かなり大きな犬小屋にしているのだ。
「散歩行く時以外は」
「身体掻くのも面倒臭い顔をして」
「困ったところのある奴だ」
「ええ、けれどね」
「やっぱりいい娘だな」
「大人しくて優しくてね」
困ったところはあってもそれ以上の美徳を備えた犬だというのだ。
「人懐っこくて愛嬌があって」
「のどかでな」
「本当にいい娘よね」
「全くだ」
心からだ、ハンスはヨハンナに言った。
「あの娘はな」
「そうよね」
「俺達にとってもいい家族で」
「娘だな」
「そうね」
血はつながっていなくてだ、そして種族も違うがだ。
「いい娘が来てくれた」
「フリッツにとってはいい妹がね」
「やっぱりあれだな」
「あれって?」
「家族三人だけだとな」
それだけだというのだ。
「物足りないんだな」
「人間だけだと」
「ペットって言うがな」
家族であるがだ、ハンスはあえてこの言葉を使った。
「必要なんだな」
「人にとっては」
「そう思った、今な」
ダイアのことを思ってというのだ。
「本当にな」
「そうね、私
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