第三章
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「やっとな」
「そこまででしたね」
「嬉しかった、その時のことは今も覚えている」
「はっきりと」
「まさにな、そしてだ」
「今からですね」
「私はその歌劇場で歌ってだ」
そしてというのだ。
「引退する」
「今宵の舞台はこうもりです」
ヨハン=シュトラウスのオペレッタだ、この歌劇場で新年は常に上演されている馴染みの作品の一つである。
「ゲスト出演という形で」
「出演するな」
「第二幕で」
オフロフスキー公爵という貴族が退屈凌ぎに開くパーティーの場面だ、そこで時折ゲストが出て来て歌うのだ。
「そこでとなります」
「そうだね」
「そしてマエストロが歌われる曲はです」
「あれだね」
「野薔薇です」
シューベルトの名曲の一つだ、彼が療養中に作曲した曲だ。
「それを歌ってもらいます」
「予定通りだね」
「そしてそれがです」
「私の最後の舞台で最後に歌う曲か」
「そうなります」
「野薔薇はずっと歌ってきた」
ブライテンは感慨を込めてミッタマイヤーに言った。
「学生だった頃から練習の為に、そして」
「今までもですね」
「ずっと歌ってきた、特に思い入れがある曲だよ」
「そしてその曲を歌われて」
「終わるんだね」
「全てが」
「わかったよ、それじゃあね」
「はい、今からお願いします」
「歌うよ」
「楽屋に入られて」
そこで舞台の用意をして、というのだ。
「宜しくお願いします」
「そうさせてもらうよ、衣装は礼装だね」
「タキシードです」
「それを着てだね」
「いよいよです」
最後の舞台だとだ、ミッターマイヤーも話す。
そうしたことを歌劇場を前にして話してだった、それからだった。
ブライテンはミッターマイヤーと共に舞台の用意をした。
タキシードを着てメイクをする、そして第二幕のパーティーの場面でだった。
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