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裏仕事
第一章

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                 裏仕事
 この人物がどのチームの監督であったか、残念ながら書くことは出来ない。だから名前は伏せておくことにする。
 その監督が料亭にある者達を呼んで話をしていた。その者達はというと。
 いい着物を着ているが目が鋭い、人相も険しい。その顔を見て誰もがその筋の者達それも親分格であることがわかる。
 監督は酒を手にしつつだ、彼等に言った。
「またな」
「はい、選手をですね」
「手に入れますね」
「そうするわ」
 こう言うのだった。
「六大学のあいつや」
「あいつをですか」
「監督のチームに入れる」
「そうしますか」
「そや、そうする」
 まさにというのだ。
「今度はな、ただな」
「あの球団も狙ってますか」
「あそこも」
「そやからですか」
「あの球団には何度もしてやられてる」
 監督もまた鋭い目になって言う、その目はむしろ彼の目の前にいる親分衆ですら怯む程の威圧感、迫力がある。
「そやからな」
「今度こそはですな」
「出し抜かれん様にする」
「こっちが早いうちに取り込む」
「そうしますか」
「栄養費を出す」
「監督にも出す」
 その選手がいる大学のだ。
「それで親にも高校の恩師にもな」
「あちこちにですか」
「これまで以上にそうしますか」
「それでこっちに来てもらいますか」
「あの選手は絶対に欲しい」
 そう思うがこそというのだ。
「絶対にうちのエースになる」
「それで監督も親も恩師も抱き込んで」
「それからですか」
「監督も出ますか」
「そうしますか」
「そうする、その前にあんた達にや」
 まさにというのだ。
「そうした仕事してもらうで」
「わかりました、ほな任せて下さい」
「あの選手の周りはわし等が固めます」
「あのチームがちょっかい出そうとしてもです」
「そうさせません」
「頼むで、今回は特にや」 
 とりわけというのだった。
「欲しいさかいな」
「ほな」
「やらせてもらいます」
 親分衆も応えた、そして。
 彼等はまずは料亭で酒と食事を楽しんだ、それから。
 親分衆は料亭を出てそれぞれの屋敷に戻りそれぞれの組の者達に言った。
「監督から話が来たわ」
「それで、ですか」
「すぐに動く」
「そうしますか」
「ほな大学の方に行きますか」
「すぐに」
「行くけどわかっとるな」
 親分達は組の者達に強い目で言った。
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