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トシサダ戦国浪漫奇譚
第一章 天下統一編
第三話 秀清との密約
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い。
 秀清は前々から義父、小出吉政に一物抱いていた。そして、俺が高禄を得たことと酒の力もあり、思うところがあった秀清は俺に仕官したいと頼むに至ったというところか。
 秀清が俺の家臣になることは願ってもない。求人が難しい馬上格の侍(戦場で騎乗を許された侍)と信頼できる家臣を一度に得ることができ一挙両得だ。だが、義祖父と義父に話を通さずに横紙破りな真似はできない。間違いなく小出家との間に波風が立つだろう。

「義叔父上、俺はその提案願ってもないです。でも、義祖父上は頭を縦に振るとは思いません」

 俺は口角を上げた。俺が乗り気なことを理解すると秀清は口元に笑みを浮かべた。秀清を引き抜くための算段は無いことは無い。義父を上手く踊らせればいい。
 義父に秀清を俺の家臣にすることを納得させるのは難しくない。
 義父は秀清と同じく秀清のことをよく思っていない。そして、秀清の存在でどれだけ自分が助かっているか自覚がない。
 問題は義祖父だ。義祖父は義父の足りない部分を補うために秀清を義父の下につけた。秀清が庶子で彼の母の出自が低かったことも、義父の家臣に据える理由として調度良かったに違いない。義祖父、小出秀政の出自を考えれば、彼が秀清の母の出自が低いと断ずることに笑いがこみ上げてくる。成り上りの権力主義者ほど傍から見ていると痛々しい。でも、義祖父の考えは小身とはいえ大名となった者の考えとしては間違っていない。

「お前の力でどうにかできるのでないか?」

 秀清は腹案無しで俺に仕官したいと言い出したのか。俺は呆れてしまう。
 秀清の立場からすると、義祖父に逆らえる立場でもない。だから、義父に不満があろうと黙って義父の元で働き続けていた。ここは俺が案を出すしかない。

「流石に私だけの力だけでは義祖父上を黙らせることは難しいです。義祖父上は小出家の当主です。当主の言葉は絶対です」

 俺は言葉と裏腹に自信に満ちた表情だった。秀清は俺の手腕を買っているから、腹案無しで俺に仕官の話を持ちかけた。秀清の力じゃどうにもならないことだからな。俺は人材が欲しい。秀清は俺の家臣になりたい。そして、義祖父を納得させる勝算があるなら何も迷うことはない。

「義叔父上、俺に仕官するなら、この話をまとめるために力を貸してもらいます。そう難しい話じゃありません」

 俺は悪巧みを思いついた悪党の顔で秀清に条件を掲示した。義祖父は義父が秀清を手放すことを絶対に許さない。それなら消極的な賛成を受け入れさせればいい。それが黙認だろうと構わない。
 秀清は徳利を取り開いた碗に酒を並々と注ぎ一気に煽った。

「悪い顔だな。卯之助、お前の策に一枚噛ませてもらおう。俺は何をすればいい」

 秀清は豪快に大笑いし俺の条件を快諾した。

「十四日後、俺は義
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