第一章 天下統一編
第三話 秀清との密約
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俺は未だ十二歳だぞ。この時代に飲酒は二十歳からという決まりはない。ここで年齢を理由に断ることもできない。
俺は秀清から酒杯を受け取り一気に飲んだ。少し握り飯を食べておけば良かった。空きっ腹に酒はきついな。まじで五臓六腑に染み渡るような感覚だ。でも、酒の味はほんのり甘く思ったより飲みやすかった。ついつい飲み過ぎてしまいそうだ。
「良い飲みっぷりだな。ささ。もう一献」
秀清は笑顔で俺に酒を注いできた。俺は秀清に促されるままで酒をあおり、酒杯に口をつけた部分を指で拭いて秀清に返した。
「卯之助、初めての酒の味はどうだ」
秀清は興味津々とした顔で俺に聞いてきた。
「美味いです。でも腹に染みました」
俺は苦笑いで秀清に返した。秀清は豪快に大笑いした。
「ささ。義叔父上、今度は私が注ぎましょう」
俺は自分の膳に置いている徳利を取り、秀清に差し出した。秀清は嬉しそうに酒杯を差し出す。俺が酒杯に酒を注ぐと秀清は一気に飲んだ。
「卯之助、もう一杯貰えるか」
「どうぞ。どうぞ」
俺は秀清の酒杯に酒を注いだ。秀清は感慨深そうに酒杯に注がれた酒を眺めて、ちびちびと飲んだ。俺はその様子をしばし眺めていたが腹の虫が鳴り、俺は握り飯を掴み取るとかぶりついた。握り飯は塩味がなく少し物足りない。塩味が欲しくなり味噌汁を啜った。味噌汁は温い。だが、握り飯と塩っぽい味噌汁はよくあった。
「卯之助、酒は追々と慣れればいい。これからは付き合いもあるだろうからな」
秀清は酒杯を口にしながら俺に言った。
「義叔父上には本当に感謝しています。気兼ねなく会話できるのは義叔父上だけでした」
今後は会う機会も減るだろうから秀清に今までの礼を込めて言った。
「卯之助、水臭いこと言うな」
秀清は照れくさそうに頭を?きながら言うと、彼は神妙な顔で俯いた。
どうしたのだろうか。秀清の様子が変だ。何か思い詰めているような感じがした。
「義叔父上、どうしました?」
俺は秀清に声をかけた。秀清はしばし沈黙を保っていたが口を開いた。
「卯之助、俺をお前の家臣にしてくれ」
俺は秀清の突然の頼みに沈黙してしまう。信頼のおける家臣は喉から出る程欲しい。秀清の申出は嬉しい限りだが「はいそうですか」と話は進まない。
「義叔父上、義父上はご存知なのでしょうか?」
「お前に直接頼んでいるんだ」
秀清は神妙な雰囲気を崩さず俺に言った。彼は本気のようだ。義祖父や義父に黙って俺に仕官の話を持ってきて、それが露見した時のことを秀清は考えていないのか。間違いなくややこしいことになる。
いや違うな。俺が義父に漏らさないと理解しているからだろう。この話を俺は義父に漏らすつもりはな
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