第一章 天下統一編
第三話 秀清との密約
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ため倍以上に値上がりしていたそうだ。
料理の準備が整い酒が届き夕餉の準備が整うと侍女達は配膳を始めだした。準備が整った膳を次から次へと庭の軒下で休息を取っている人足達に持っていった。彼らは一斉に膳に群がりだした。それを眺めていた俺は「蟻のようだ」と思ったことは秘密だ。
軒下が騒がしくなると秀清が彼らに「皆の分はあるから慌てなくいい!」と制していた。人足達は秀清の制止でおとしなくなった。彼らは順番に膳を受け取り料理を思うままに貪っていた。彼らの行儀の悪さに俺は少し引いていた。だが、頑張ってくれた彼らを労いたいと思い、俺を気を取り直して彼らに声をかけていった。
台所に俺が戻ると侍女達とリクが美味しそうに握り飯を食べ味噌汁をすすっていた。女性の方が行儀がいいなと感想を抱きつつ、俺は侍女達に労いの言葉をかけていった。
その後、俺は小出家の武士達を労い会話をしつつ、家臣団を作るために人材を募集していることをそれとなく彼らに匂わしてた。あまりに露骨にやると義父の機嫌を損ねてしまうからな。彼らは俺の話に満更でもなさそうだった。
俺は引越を手伝ってくれた人達への労いを終えると奥座敷に向かった。そこでは秀清が塩を肴に酒を飲んでいた。
俺は酒を飲む秀清を素通りして上座の席に座った。俺の席にも膳が用意されていた。膳は二つ用意され、目の前の膳には握り飯三つと味噌汁が入った椀があり、その横に置かれた別の膳に酒杯と徳利が置いてあった。俺の分の酒もあるようだ。
酒を上手そうに飲んでいた秀清は俺を見て一旦酒杯を置いた。
「卯之助、皆はどうだった?」
「義叔父上、みんな楽しく飲んで食べていました」
「だろうな。お前は人たらしだよ。俺に付いてきていた者の中にお前に仕えたいと言っていた者がいたぞ」
秀清は俺を見ながら小さく笑った。
「私は引越を手伝ってくれた人達を労いたかっただけですよ」
俺は他意が無いことを秀清に主張した。秀清はおかしそうに笑いながら、酒杯を手に取り徳利を掴むと酒杯に酒を注ぎ飲んだ。
「義叔父上、酒は気に入っていただけましたか?」
「久し振りに楽しい酒を飲ませてもらっている」
秀清は機嫌良さそうに酒を飲み出した。しばらく彼と何気ない会話を交わしていた。俺は秀清が上手そうに飲む酒を時々見ていた。酒杯に注がれた酒は白く濁っていた。澄んだ酒じゃない。この時代の酒は濁酒だがアルコール度数は清酒と変わらない。
突然、秀清は俺に酒の入った酒杯を差し出した。俺は酒が欲しくて見ていた訳じゃないんだが。
「義叔父上、その酒は義叔父上のために手に入れた酒です。私は結構ですから、義叔父上が全て飲んでください」
俺はやんわりと「酒は飲まない」と断った。
「卯之助が元服した目出度い日だ。ささ。一献」
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