第一章 天下統一編
第三話 秀清との密約
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ら城に出仕だが、合間を見て小出家に出かけるとしよう。木下家と寧々叔母さんにも会いに行かないといけない。明日から忙しくなる。
「肝心の酒がないな」
俺は秀清との約束を思い出した。よくよく考えれば小出家から酒を持たせてくれる訳がない。しかし、酒を手に入れないと秀清が不満を口にしそうだ。
「殿様、酒でございますか?」
俺の話に食いついてきたのは九蔵だった。俺の話の流れでご相伴にあずかれると思っているのだろう。秀清だけに酒を出すのも何だ。引越を手伝ってくれた皆は屋敷の変更で大変だったに違いない。その詫びも兼ねて夕飯に酒もつけよう。
酒の買い付けは九蔵に任せよう。
俺は懐に手を入れ紫布に包まれた秀吉からの祝儀を取り出した。そして、俺は九蔵とリクに背を向け紫布の包みを開け中身を見て目を見開いた。
竹流金が二本ある。一本四十四匁(約百六十五グラム)位はある。これ一本で五十石(約四百万円)の価値はある。これで酒を買うのは無理があるな。
俺は米俵に視線を向けた。これで決済するか。木下家からも祝儀に米とか貰えるだろうし問題ないだろう。
「九蔵、私の名前を出して酒を屋敷に届けるように注文してきれくれ!」
「殿様、分かりました」
「私の名前が通らないなら、私の義父である馬廻衆・小出吉政の名前を出せばいい」
九蔵は俺に頭を下げて足早に去った。俺はリクを連れて勝手口に向かい、台所で掃除をしている侍女に振る舞う食事の献立を伝えた。侍女達は俺からの持てなしを聞き喜んでいた。ここまで喜んでくれるなら俺も嬉しい。リクは侍女達に加わり台所の掃除を手伝っていた。
一刻(二時間)が過ぎ、引越の作業は終わった。今、人足達は各々休んでいた。彼らの中には煙管で煙草に火をつけふかしている者達もいた。俺は煙草が嫌いだから、煙草を吸う者達に気を遣わせないように勝手口から台所に移動した。
俺が台所に来ると侍女達とリクは忙しそうに炊事をはじめていた。掃除の次は炊事とは皆働き者だな。侍女達とリクには今度差し入れをしよう。お菓子がいいだろうか。
ご飯が炊けると侍女達とリクは手慣れた手つきで握り飯を作り、鍋で味噌汁を作っていた。味噌汁は味噌を湯で溶いた簡素なものだったが食欲をそそる香りだった。
夕飯の準備が整うと九蔵がようやく戻ってきた。彼と一緒に酒屋の手代と丁稚を連れだっていた。その後ろから五人の人足が引きずる酒樽三つが積まれた荷車が運び込まれてきた。
俺は九蔵の連れてきた手代と二三言葉を交わした後、米俵で酒の決済をし品物を受け取った。手代はまず酒樽三つを勝手口に運び込み、開いた荷車に代金の米俵を積んでいった。手代は笑顔で「今後ともご贔屓に」と頭を丁寧に下げ帰って行った。後で知ったことだが、この頃の米価は小田原征伐を控えていた
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