第一章 天下統一編
第三話 秀清との密約
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りたいと思っただけだ。勿論、お前達も腹一杯食べてくれよ」
俺は九蔵とリクに微笑んだ。俺の言葉に二人とも俺の申出に喜んでいる様子だった。この頃の時代は米を腹一杯食べれること自体がごちそうだからな。たまにはこういうのも良いと思う。
「殿様、私達だけで米俵と味噌樽を勝手口に運ぶんですか?」
リクが俺に親しみを持って声をかけてきた。最初の頃より、緊張が解けてきたようだ。俺に親近感を持ってくれることは良いことだ。怯えながら俺に仕えられたら、俺は息が詰まってしまう。
「全部荷物が運び込まれてから、手の空いた人足達に手伝ってもらえばいい。私が料理するから九蔵とリク手伝って欲しい」
「殿様が料理をなさるんですか?」
九蔵とリクは戸惑っている様子だった。
「こう見えても大和国の興福寺に一年半だが遊学していた。だから、料理くらいできるぞ」
俺は自信満々で九蔵とリクに言った。
俺は興福寺へ三年間遊学する予定だった。だが、ある時義父から京に連れ戻され、俺の遊学の期間は一年半に繰り上げられた。義父の心変わりの原因に心辺りはないが、興福寺側の俺への評価が関係しているのではと思っている。
俺が興福寺で勉強をはじめ一年が経過した頃、学僧の間で俺は神童と呼ばれるようになっていた。俺は歴史好きの延長で、学生の頃から古文が得意科目だった。勉強の下地があった俺は学僧の指導のお陰で漢籍を読めるようになっていた。それで学僧の間で俺の評価は一気に急上昇した。そして、義父が俺を連れ戻した時期は俺が神童と呼ばれ出した半年後であった。俺が宝蔵院の院主、胤舜から槍術を学ぼうと弟子入りを頼んで断られた頃だから良く記憶している。
義父の邪魔で俺の楽しい学問三昧の生活は突然終わりをつげた。
あの頃の思い出が懐かしい。寒空の下、炊事のために水を汲みに従事させられるつらい日々は今では良い思い出た。あれをもう一度やれと言われたら全力でお断りさせてもらう。
俺が興福寺に遊学していた頃、俺は学問三昧だけでなく炊事洗濯も学問の一環として従事していた。だから、握り飯と味噌汁位なら問題なく作れる。
久し振りに俺の料理の腕を誰かに披露したい。俺は袖をまくった。
「滅相もないです。殿様に料理などさせれません!」
九蔵とリクが大慌てで俺を止めてきた。俺は二人の雰囲気に押されて料理をすることを諦めた。やはり駄目か。俺は残念な気分になりながら佇まいを正した。息苦しいが俺も立場があるからな。ここはおとしなく引き下がるとしよう。
俺は荷車に積まれた米俵と味噌樽を今一度眺めた。
これだけあれば当分は食べるに困らない。
小出家からの餞別に対して純粋に感謝した。俺は感謝しつつ小出家に顔を出す理由ができたことに内心ほくそ笑んだ。
明日か
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