暁 〜小説投稿サイト〜
方言
第三章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「どうしてもね」
「わかりにくいよな」
「日本の北と南だし」
「余計に」
「言葉って難しいわ」
 こう津軽独特の訛りで言うのだった、それで。
 二人は仕事の度に話をするがどうしてもだった。
 時々わからないで聞きなおすことが続いた、しかし。
 その二人を見てだ、二人の所属する課の課長である日高一郎はこう言ったのだった。
「いいね、あの二人」
「仕事がですね」
「出来ますよね」
「いやいや、仕事だけじゃないんだよ」
 痩せた顔にある眼鏡の奥の目をきらりとさせての言葉だ。
「これがね」
「っていいますと」
「やっぱり言葉ですか」
「それが」
「あれは使えるよ」
 こう言うのだった。
「一つ策を思い浮かんだよ」
「策?」
「策ですか」
「二人共言葉を恥じていないから余計にいいよ」 
 それぞれの言葉の訛りをというのだ。
「だからいいよ」
「っていいますと」
「ここは」
「どういった策で」
「やがてわかるよ、今度二人を飲みに連れて行って話そう」 
 そして実際にだ、彼は自分の策を二人に飲み屋で話した。二人は彼からそう言われてまずはそれぞれだった。
 目を丸くさせてだ、そのうえで問い返した。
「それで、ですか」
「いいんですね」
「その時は思いきり喋って」
「そのうえで」
「頼む」
 日高は二人に微笑んで告げた。
「それでね」
「わかりました、じゃあ」
「そうさせてもらいます」
「そう、遠慮は無用だよ」
 まさにというのだ。
「その時はね」
「それなら」
「その時は」
 二人もこう返す、そしてだった。
 二人は暫くはこれまで通り仕事をした、だが。
 ある日だ、二人のところにだ。電話を受けた日高が来て言った。
「出番だよ」
「遂にですか」
「その時が来たんですね」
「そう、ではね」
「わかりました、それじゃあ」
「今から行きます」
 二人はそれぞれの訛りのある標準語で応えた、そしてだった。
 二人である場所に向かった、そこは二人のいる本社にある苦情受付係だった。何とそこにだ。
 明らかにその筋の人間が数人で乗り込んできていてだった、汚い言葉で喚いていた。どう見ても言い掛かりだった。
 その彼等のところにだ、二人は行ってだった。
 そのうえで彼等のそれぞれの方言で対応しだした、すると。
 男達は戸惑ってだ、こう言い合った。
「な、何じゃ!?」
「何じゃこの言葉」
「何処の言葉じゃ」
「日本語か」
 クレームのリズムを弱めた、しかし。
 二人はそれぞれの方言で対応し続けた、すると男達は今度はだった。
「われ等何て言うとるんじゃ」
「ちゃんと喋らんかい」
「ほんま何言うとるんじゃ」
「そやからこっちはな」
 だが二人は方言のままだ、彼等
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ