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方言
第二章

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 そしてだ、食べものの好みもだった。
「また林檎の話か」
「そっちも薩摩芋好きよね」
「いや、本当に林檎好きだな」
「薩摩芋ばかりで飽きない?」
 食べものの話をしてもそれが出ていた。
「何か噂には聞いてたけど青森は林檎か」
「鹿児島はそのお芋なのね」
「それでいつも食べてるのか」
「何かと」
「いや、何かな」
「らしいわね」
 こう言い合う、そして。
 このやり取りの中でもだ、二人はだった。
 止まってだ、お互いの言葉を確認し合うのだった。
「ええと、今何て」
「何て言ったのかしら」
「林檎?」
「薩摩芋よね」
「何かな、ずーずーで」
「凄いアクセントだから」
 それでお互いに聞き取れない時があるのだ、だからこうして確認し合うことが度々あった。とかくこうしたことが続き。
 大作は周囲にだ、琴乃のことをこう言ったのだった。
「津軽っていうと」
「ああ、三上さんのな」
「出身地のね」
「あそこのことか」
「確か太宰治の出身地だったよな」
 言ったのはこのことだった。
「あの人の」
「ああ、太宰はあそこだよ」
「あそこの生まれよ」
「津軽の大地主の息子で」
「実家今も政治家なのよ」
「本名は津島修治だったな」
 大作は太宰の本名も言った、太宰治というのは実はペンネームであり本名はこういったのだ。
「それで津軽生まれで」
「そのままあっちの言葉だったらしいぜ」
「東京でも」
「標準語出しても訛りがそうで」
「結構わかりにくかったらしいな」
「そうだよな、津軽の言葉は」
 琴乃が使っているそれはというのだ。
「おいには本当にわかりにくいな」
「日本の端と端だから」
「余計に、よね」
「そこは」
「どうしても」
「いや、組んで仕事をすることが多くて」
 実は仕事も人間性も相性は結構いいのだ、だから大作は琴乃を決して嫌ってもいない。それは今の同僚達に話している時にも出ている。
「その時に結構苦労するな」
「標準語でもな」
「訛りは出るから」
「どうしても」
「そこが辛いな」
 琴乃についてこう言うのだった、そして。
 琴乃は琴乃でだ、同僚達に大作のことを話した。大作が彼女のことについて言ったその同僚達にである。
「西郷隆盛さんね」
「鹿児島っていうと」
「やっぱり」
「あの人っていうのね」
「あの人は昔の鹿児島弁だったらしいけれど」
 鹿児島の言葉は昔は最早日本語なのかわからない程だった、他の国の者に話している内容機密がわらない様にあえてそうした言葉にしたのだ。
「やっぱり」
「まあ相当にね」
「鹿児島弁はわかりにくいし」
「やっぱり西郷さんもね」
「そうだったのは間違いないわ」
「そうよね、青森から見たら」
 琴乃も言うのだった。
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