第一章
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方言
福留大作は鹿児島出身だ、先祖代々の鹿児島人である。
そして三上琴乃は青森出身である、それも津軽だ。
二人はそれぞれ大学まで地元にいた、しかし地元の企業に就職したと思っていると。
その就職先である八条自動車は日本はおろか全世界にシェアを持つ巨大な企業でだ。二人はそれぞれ神戸の本社に配属されることになった。
そこで顔を見合わせてだ、まずは。
大作はその大柄で厳しい顔からだ、こう言った。
「宜しくお願いします」
深々と頭を下げて挨拶をした、そして。
琴乃もだ、小柄で細い雪の様に白い顔を深々と下げて挨拶を返した。
「こちらこそ」
「?その言葉は」
「標準語?」
二人は顔を上げてだ、お互いにだった。
顔を顰めさせてだ、今度はこう言い合ったのだった。
「何かわからないな」
「何て言ってるのか」
「あれっ、方言使ってないのに」
「標準語を喋っているのに」
「何て言ってるんだ?」
「ええと、何て」
二人共驚いて言い合うのだった、そして。
今度はだ、二人共同時に思いついてだった。
試しにそれぞれの方言を使ってみて話した。すると。
もう全くわからなかった、これは周りもでだ。
同僚達は驚いてだ、こう言い合った。
「何だ一体」
「二人共何て言ってるんだ?」
「日本語か?」
「どっちも日本語喋ってるのか?」
驚いて言い合うのだった。
「鹿児島の言葉もな」
「青森、津軽の言葉か」
「どっちもわからないな」
「全く」
「鹿児島の言葉はアクセントが独特で」
「津軽の言葉はずーーずーーが凄くて」
まさにどちらもかなり凄く。
「方言だと余計にな」
「わからないな」
周りも驚くばかりだった、そして。
二人の方もだ、ここでだった。
方言を止めてだ、真顔で向かい合って言い合った。
「止めるか」
「そうしましょう」
真剣に言い合うのだった。
「何かもう」
「標準語でもわかりにくいのに」
「お互い方言で話すと」
「わかりませんね」
「ええと、おいは福留大作、二十五歳」
「おらは三上琴乃、二十五歳」
二人はそれぞれ名乗り年齢も言い合った。
「宜しく」
「こちらこそ」
「同じ歳で同期入社だし」
「今度共宜しく」
二人のスタートはこうしたものだった、とりあえずは握手をして。
共に仕事をする様になった、二人は特に仲は悪くなく仕事もいい連携を見せて行っていた。だがそれでもだった。
言葉のやり取りはだ、どうしても。
「えっ、今何て言ったんだ」
「そっちも」
普通のやり取りをしてもだ。
お互いに戸惑ってだ、聞き返すことが多かった。
「領収書?」
「契約?」
「そう言ったよな」
「そっちも」
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