第五章
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「今あんたが言ったしな」
「それじゃあワインに行くのね」
「ワインっていったらな」
広良はさらに言った。
「フランスだな」
「あの国にするのね」
「フランス風のバーに行くか」
「そうしたバーあるかしら」
「あるだろ、いや」
ここでだ、広良は。
考える顔になってだ、秋姫に話した。
「バーじゃないけれど美味いワインの店はあるな」
「それ何処かしら」
「ここからちょっと歩いたパブか」
「パブなの」
「そこいいワインが一杯置いてるんだよ、チーズやソーセージも美味しくてな」
「パブはビールでしょ」
「それでもワインも出るだろ」
パブでもとだ、広良は答えた。
「それでな」
「そのお店は、なのね」
「ワインも美味いからな」
「じゃあ今度はワインなのね」
「それを飲むか」
「そうね、それじゃあね」
秋姫は微笑んでだ、そしてだった。
二人でだ、ウイスキーを飲んでだった。
今度はそのパブに入った、これまでの二軒のバーよりも大衆的というか砕けた感じであった。店の端に置かれている西洋の酒樽が雰囲気を醸し出している。
その酒樽を見つつだ、二人は二人用の丸い席に座った。そうして。
秋姫は注文した赤いワインを見ながらだ、広良に言った。
「これまでのお店とは違うけれど」
「この店もだろ」
「ええ、上海ね」
「西洋だよな」
「そうね、その感じね」
「音楽もな」
店の中の音楽についてもだ、広良は言った。
「いいだろ」
「これシャンソンね」
「シャンソン好きかい?」
広良は自分のグラスの赤ワインを見ながら秋姫に尋ねた。二人の間には酒の他にチーズやソーセージ、ハムが置かれている。
「こっちの音楽は」
「あまり聞かないわ」
「そうか」
「むしろさっきのお店のね」
イギリス風のバーの話である、ウイスキーを飲んだ。
「イギリスの民謡の方がね」
「ホーム=スイート=ホームか」
「よく聴くわ」
「あの曲人気あるな」
「そっちの方がいいかしら」
「そうか、じゃあこの曲は」
「あっちの方が好きでも」
イギリスの民謡の方がというのだ。
「いいわね」
「シャンソンもか」
「お洒落な感じがしてね」
「フランスって感じがしてだろ」
「ええ、このお店はあまりフランスって感じがしなくても」
それでもというのだ。
「いいわね」
「そうだよな、じゃあ飲むか」
「ええ、ここでもね」
「ここは一本ずつ空けるか」
「ボトルで」
「そして次の店に行くか」
「そうして朝までなのね」
秋姫はくすりと笑って校長に返した。
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