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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百九十三話 権謀の人
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ら』
司令長官の声に艦橋が更にざわめく。
スクリーンに映る司令長官は穏やかに言葉を続けた。
『ジークフリード・キルヒアイス准将が私を殺そうとしたのですよ』
「馬鹿な、キルヒアイスがそんな事をするわけが無い」
愕然としてローエングラム伯が呟いた。
『私が生きていると都合が悪いのだそうです。ローエングラム伯が帝国を簒奪するには邪魔だと言っていました』
「……」
スクリーンが切り替わった。キルヒアイスが司令長官にブラスターを突きつけている。視界の片隅でシュタインメッツ、ジンツァー、リュッケの三人がローエングラム伯の傍にさり気無く近づくのが見えた。
『残念でしたね、バラ園での襲撃は上手くいかなかった』
『……』
『否定しないのですね、准将。やはり関係していましたか』
その言葉に艦橋がざわめく。ローエングラム伯は蒼白だ。
『何故私を殺すのです、キルヒアイス准将』
『時間稼ぎですか』
『いいえ、ただ疑問に思ったのです。何故私を殺すのだろうと』
『邪魔だからです』
『邪魔とは?』
『ラインハルト様が帝国を手に入れ、宇宙を征服するには閣下は邪魔なのです。閣下さえ居なければラインハルト様は……』
『ローエングラム伯が帝国を簒奪するためには私は邪魔ですか』
先程までのざわめきは無い。皆蒼白な顔で沈黙している。互いに顔を合わせる事さえしない。どういう顔をしていいのか皆分からないのだろう。俺自身此処まで決定的な証拠があるとは思わなかった。スクリーンが切り替わり司令長官が映った。
「嘘だ、こんな事はありえない、キルヒアイスがこんな事をするわけが無い……」
ローエングラム伯が蒼白な表情で呟いている。
『見ての通りです。キルヒアイス准将は先日のバラ園での暗殺事件に関わっています。内務省、宮内省と組んで混乱を大きくし、それに乗じて帝国の権力を握ろうとした。その全てがローエングラム伯、卿のためです』
「何故そんな事を……。俺がそんな事をしてくれと何時頼んだ。何故だ……」
『その答えは、オーベルシュタイン准将に聞いたほうが良いでしょう。今回の陰謀のシナリオを書いたのは彼ですから』
周囲の視線がオーベルシュタインに集中したが彼はたじろぐ様子も見せず平然としている。視線などまるで感じていないようだ。
「オーベルシュタイン、そうなのか? 卿がキルヒアイスに暗殺などさせたのか? 何故だ」
「昨日の司令長官の暗殺事件はキルヒアイス准将の独断です。小官は関係有りません。ですがそれ以外は小官が考えました」
『薬を用意したのは卿ですね』
「そうです」
「薬?」
『キルヒアイス准将は心臓発作に似た症状を起す薬で私を薬殺しようとしたのですよ。自然死に見せるためにね』
「!」
「何故だ、何故こ
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