二十七話:試練
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ある。
体から血を流し、肩で息をするフィンとディルムッド。
そして、牙をギラつかせるイノシシ。
『ま、魔猪だぁーッ!』
「ディルムッド、あれは我々の手で仕留めよう。安心したまえ、水の準備はできている」
「こ、零さないでくださいね、主」
「ははは……もう、過ちは繰り返さないさ」
どこで手に入れたのか、槍を構えながら主従は語り合う。
フィンには、水を使い傷を癒す術がある。
しかし、かつてその力を持ちながら、ディルムッドを癒すことができなかった出来事があった。
その出来事は、二人の関係に深い溝を生んでいた。
「そういうわけだ。ぐだ男君、ここは我々に任せて、先に行きたまえ」
『でも……』
「ご安心を。ここで立ち向かわければ、試合に勝って勝負に負けるも同然。すぐに片づけて追いついてみせます」
爽やかな笑みを浮かべて、ぐだ男を先に進ませようとするフィンとディルムッド。
それは男の意地であり、戦士としての誇りであった。
余りにも眩い生き様に、ぐだ男は涙を堪えられず下を向く。
『ちゃんと追いついて来いよ…。絶対だぞ! 絶対だ!』
「大丈夫さ、問題はない」
「ぐだ男殿の方こそ、私達が来るまでに進んでおかないと、簡単に抜いてしまいますよ」
互いに言葉を交わし、背を向ける。
ぐだ男は、背後から聞こえる男達の雄叫びと、魔猪の咆哮に背中を押され走り出す。
だが、胸の中でざわつく不安が消えることはなかった。
【フィン選手、ディルムッド選手アウトー!!】
『やっぱり死亡フラグが立ってた……』
死亡フラグに槍兵。これだけ状況が揃っていれば結果は一つしかない。
デッドエンドである。
『兄貴なら…兄貴なら、戦闘続行で何とかなったかもしれないのに…!』
【クー・フーリン君は、俺が超えたらあいつらの立つ瀬がないって言って不参加だよ】
『この人でありィイイ!!』
【教師として一応言っておくけど、そんな言葉はないからね】
以外に、細やかな気遣いができるクー・フーリンを褒めながら、ぐだ男は走る。
後ろから追ってきてくれる者はいない。
ただ、前を独走するヘラクレスを追っていくだけである。
決して置いてきた者の意志を無駄にしないために。
「やっと来たのね、子イヌ」
「私の歌を一人で聞きたいなんて贅沢なんだから」
「そうそう。でも、そこまでして私を求められたら答えないわけにはいかないわね」
『なんで三人もいるんですかぁ!?』
次の試練に現れた者達を見て、ぐだ男は絶叫する。
ランサー・エリザベート、キャスター・エリザベート、ブレイブ・エリザベート。
まだ、バーサーカーの枠も残している自称アイドルだ。
「そ
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