1部
1章
第1話 武偵殺し
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しになるように颯汰の心の靄は晴れた
俺は誰も死なせない、もうあんな思いはしたくない。死なせないために、この力を使う!
「住良木!暫く時間を稼いでくれ!」
颯汰の言葉を聞いた奏は一言「了解!」と一言だけ残し飛び出した。
俺は懐からアンカライトナイフを取り出し、目の前に構え、唱えた
「我、戦いし者。戦う為の力を求めん。我、護りし者。護る為の力を求めん。我、悪を討つ者。悪を祓う力を求めん。我、力を受け継ぎし者、その力を用いて事を成す。我が血脈よ、その血を解放し我に力を与え給え!」
空気が変わった。
傍から見れば厨二臭い台詞を吐いただけに見えただろう。
だが、その場に居たものは違った。颯汰から溢れ出る殺気にも似たような気配が感じられる程だ。
そんな颯汰を見てダレイオスは歓喜していた。ようやく本気が見られる、そんな喜びを隠す事なく叫んだ。
「いいぞ、もっと楽しませろ!貴様の全力をぶつけて来い!」
1人で熱くなるダレイオスとは対称に颯汰は落ち着いていた。既に颯汰の目にはダレイオスは映っていない。ただ一点を除いて。
一瞬だった。颯汰がこれまでとは比べ物にならない速度で走り出し、ダレイオスの肩へ向けナイフを突き出した。その咄嗟の出来事にダレイオスの動きが遅れることになった。
しかし、それが勝敗を分けることになった。
そのナイフは肩を一直線に貫き、利き手をやられたダレイオスは銃を落とし、地に伏せていた。
「これが…Sランクの理由か…納得だ、少し油断が過ぎたようだな…」
そして最後にこう言った
「貴様は狙われている…ある組織にな…まあ近いうちに知ることになるだろう…せいぜいくたばらない事だな…」
そう言い残し彼は意識を失った。
そんなダレイオスを見たワゴン車の運転手はパンクした車でその場から逃げようとした。
しかし遅かった。こちらの車だけでなく、武偵省と警察の増援が到着しその場で拘束された。同時にダレイオスも拘束され、武偵殺し事件は幕を閉じたのであった。
事情聴取が終わり解放された颯汰は奏を探したがもうその場には居なかった。まるで風の様な少女だと思った。
「彼女は一体何者だったんだ」
自分の事を知っている、名前だけでなく「力」についても。それが気になっていた。
「でもなんだろう。何か大事なことを忘れている気がする…あっ」
颯汰は思い出したかのように、
「遅刻だぁぁー!!」
と大きな声で叫んだ。
それを聞き少し先に居た奏はクスッと笑いながら、
「またね、三劔颯汰君」
と言い残し車の窓を閉めた。
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