第五章
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「意外ね」
「意外?」
「じゃあこの狸囃子から何かヒントを得たかしら」
「こうした演奏が出来たら」
「そう言うのね、じゃあこれからはね」
香枝は娘の言葉を受けてあらためて述べた。
「和楽器も勉強してみる?」
「そうしていいの?」
「奈々ちゃんがそうしたいならね」
「それじゃあ」
「これがいい作詞や作曲につながれば」
香枝はこうも思った。
「いいから」
「それじゃあ」
こうしてだった、奈々はこの日から和楽器も勉強しだした、暫く作詞作曲は奈々の判断で中断しニコニコでは歌い専門になった。
「もう作詞作曲しないのか?」
「歌だけになったな」
「まあそれもいいか?」
「何かオリジナル色なかったしな」
「じゃあいいか」
「歌だけでも」
書き込みはこうした感じになってだった、そのうえで。
奈々は小学校、中学校と歌だけに専念した。そして神戸の八条高校に入ってだ。軽音楽部に入ったがそこで社民線を演奏して言った。
「私の楽器は和楽器です」
「っていうと和楽器バンドか」
「それ目指してるのか」
「はい、メンバーを集めて」
そしてというのだ。
「バンド組みたいですが」
「それなら雅楽部にも行ってみたらどうだ?」
「あそこ和楽器をやってるからな」
「だからどうだ?」
「そっちも行ってみたら」
「それじゃあ」
先輩達の言葉に頷いてそれで雅楽部にも顔を出してメンバーを探すと幸い揃っていてだ。和楽器バンドを組んでニコニコでも発表すると。
独創性も開花していてそれを評価された、奈々は高校生和楽器バンドの三味線兼ヴォーカルとして一躍有名になった、このことに母にこう言った。
「全部あの時がはじまりだったわ」
「公園のね」
「狸囃子聴いてね」
「そうね、そこから和楽器に目覚めたからね」
「皆といつも喧嘩をすることはあっても」
バンドのメンバーとだ。
「おおむね仲良くやってるし」
「いい感じなのね」
「ニコニコでも好評だし」
「独創性があるって言われてるのね」
「そうなの」
実際にというのだ。
「いい感じよ」
「それは何よりね」
「本当にあの時からよ」
小学四年の時に狸囃子を聴いてからというのだ。
「変わったのは、私にとって狸様々よ」
「狸に感謝してるのね」
「だから狸の曲も作ってみようかしら」
「いいんじゃないかしら」
母も賛成した、奈々は自分の音楽を見出すことが出来ていた。それは公園の狸囃子からだと周りにも言っていたが信じるのは一緒にいた母だけだった。だがそれでもよかった。彼女自身がその時に変わったのは事実だから。
狸囃子 完
2016・10・29
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