第十九話 聖堂にてその十一
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「都合のいいことにです」
「我々にとって」
「王が軍を王の下に集められています」
「諸侯も軍を持つのではなく」
「王のみが軍を持たれ」
「王の命のみに動く」
「そうした軍になっていますので」
「公爵が軍を握られれば」
その時はとだ、司教も言った。
「マイラ様がですね」
「軍を完全に持ったことになります」
「それはいいことですね」
「司教もそう思われますな」
「無論です」
当然といった返事だった。
「私にしても」
「国の軍が全て王の下にあることは」
「何があってもです」
「叛乱が起ころうとも」
「対応がしやすいです」
それが為にというのだ。
「対外戦争もしやすいので」
「それ故に」
「軍は王の下にあるもの」
「それが理想ですね」
「王はその理想をご承知で」
今の王、マリーとマイラにとって叔父である彼はというのだ。
「その様にされているので」
「いいことですね」
「はい」
まさにというのだ。
「私もそう思います」
「それでは」
「何かありましたら」
「その時はですね」
「宜しくお願いします」
「わかりました」
確かな声でだ、オズワルド公は司教に答えた。
「お任せ下さい」
「そちらにつきましては」
「後はです」
また言った司教だった。
「マイラ様にです」
「お子がお産まれになれば」
「言うことはありません」
「そうですね、マリー様はまだ独身です」
「お子は産まれません」
産まれてもその子は庶出となる、結婚していない時の子についてもそういうことになる習わしなのである。
「ですから」
「マイラ様にお子がですね」
「産まれれば」
「ロートリンゲン家の後ろ盾も加わり」
「怖いものはありません」
例えロートリンゲン家の影響は強くなろうとも、というのだ。
それぞれの者達は聖堂の中でマリーとマイラ、父や弟の陵墓に祈りを捧げる二人を見つつそれぞれのことを考え話していた。しかし。
二人はそのことを知らず共に祈りを捧げ続けた、その祈りが終わり。
共に立つがこの時にだ、マイラは自分達の弟であった先王の陵墓の前においてマリーに対して言った。彼女の方を見ずに。
「では」
「これからもですね」
「会いましょう」
こう言うのだった。
「是非」
「有り難うございます」
これがマリーの返事だった。
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