第十九話 聖堂にてその七
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「皇帝は国を守る壁、己の為の宮殿や巨大な陵墓も築かせていて彼等も法で縛っていた」
「それに反発して、ですか」
「皇帝の死後民達が背いた」
「そうだったのですね」
「そうなり国は滅びだ」
そのうえでというのだ。
「新たな王朝が興りその国は最初の皇帝を否定してだ」
「では法により政は」
「貴族を抑え兵を皇帝に集めても」
「それでもですか」
「その皇帝の政は否定された」
「そうだったのですね」
「その通りだ、政自体は受け継がれ今もあの国を治める基になっているが」
しかしというのだ。
「その苛烈で冷酷なやり方は否定されている」
「そうなのですね」
「あの国でもですか」
「そうなっていますか」
「非情に徹して政を進めても」
「雪の帝国はわからないがな」
太子はこの国についてはこう述べた。
「あの国は大陸や東方よりも遥かに厳しい中にある」
「国が、ですね」
「その過酷な中にあるからですね」
「非情な者でないと治められない」
「そうした国であるかも知れないからですね」
「そうだ」
まさにというのだ。
「あの国はわからないがな」
「ですが太子は」
「お妃様も」
「よいか悪いかは別にしてだ」
こう前置きしての言葉だった。
「非情には徹しきれない」
「どうしてもですね」
「そこまでは出来ず」
「別の政のやり方を考え選ばれる」
「そうなのですね」
「氷は人を滅多に寄せ付けない」
非情をだ、皇帝はこう言って否定したのだった。
「火とどちらがいい」
「やはり火です」
「氷よりもです」
「火の方がよいです」
「どうしても」
「そうだな、私も妃も同じだ」
彼等にしてもというのだ。
「妃は氷ではないし氷にもなれない」
「ではこの国の主になられても」
「それでもですか」
「歯止めも利く」
「そうでもあるのですね」
「私もそうする」
いざという時はというのだ。
「その時はな、妃を止めるが」
「最初からですね」
「あの方はそこまで非情な方ではない」
「そのことを踏まえて」
「そして動かれますか」
「今後もな、しかし思うに」
太子はマリーも見た、そしてだった。
思うところがあったがだ、その考えを消して言った。
「いや、何でもない」
「?といいますと」
「今のは」
「何でもない」
問うてきた側近達にもこう返した。
「では我々はだ」
「はい、ここでですね」
「このままですね」
「お二方を見守りますか」
「お妃様を」
「そうしよう」
こう話してだ、そのうえでだった。
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