暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 33
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寧ろ彼女達にこそ、農業や工業で生計を立てられる機会を与えて欲しいと思うのに……義賊の行為が、売春婦の居場所を失わせた?
 「例えばの話、この世で一番大切な人間……お前ならハウィスか。そいつに『一粒で家一軒が買える飴玉・百粒入りの箱』を貰ったとする」
 「は?」
 「箱そのものも、世界に一つしかない貴重品だ。お前は飴を一日一粒、寝る前に食べると決めて枕元に置いた」
 (いや、幾らハウィスの贈り物でも、そんな高級品は受け取れないって! 突然、何!?)
 「ところが次の夜に確認すると、九十九粒ある筈の飴は九十八粒になっていた。何度数え直しても一粒足りない。仕方なくその夜は食べるのを諦め、箱を閉じた。が、翌日の夜改めて数え直すと、九十七粒……昨夜は食べてないのに、また一粒減っていた。更に翌日も翌々日も、何故か一日一粒減っていく飴。お前はこれをどうする?」
 「どうするって……箱に穴が空いてないか調べる?」
 「箱に不審な点や欠損は無く、飴が溶けて消えた可能性も零だ」
 「じゃあ……紐で箱を縛ってみる、とか?」
 「それでも飴が減ったら?」
 「……置き場所を変える」
 「それでも減ったら?」
 「ハウィスに相談する」
 「結果、箱に錠を付けたとしよう。鍵の置き場所はハウィスにも隠した。しかし、鍵と錠に異変は無かったのに、やっぱり一粒減っている。今度はどうする?」
 (箱や中身に異常は無く、自分以外には開閉できないのに減る……人為的に持ち出されてるの? なら)
 「わざと目に付きやすい所へ置いて、一日中見張る」
 「怪しいモノは確認できず、飴は減っていた。次は?」
 「ハウィスに預けて様子を見る」
 「勿論、減る」
 ……本当に、何の話だ? 段々苛々してきたんだが。
 「ハウィスと相談して錠を増やす。複雑な型で時間を稼いで、開くまでに犯人を捕まえれば良い」
 「翌日、錠は総て閉じられたまま。部屋を変え、錠を増やし、眠らずに見張っていても、開いてみれば減っている飴」
 「……っ箱と飴を別々に隠す!」
 「減る」
 「錠を全部付け替えて、一日中脇に抱える!」
 「国内製の錠はどれも通用しないらしい」
 「だったら国外製の錠、を……」
 「錠を?」
 男性の瞳が、突然硬くなったミートリッテの表情を探る。
 (…………傷一つ無い箱から少しずつ減っていく高価な飴。施錠はできても本来の役目が機能せず、意味を持たない錠と鍵。まさか、これ……)
 「……国外製の錠に付け替える」
 「そうか。では、使わなくなった大量の錠と鍵はどうする?」
 「使えない物は……『棄てる』……」
 (……ああ、やっぱり)
 自分の言葉で足下がぐにゃりと歪む。
 苛立ちが自己嫌悪に取って代わる。
 吐き気を抑えたくて口元を両手で塞いでも
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