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赤翔玄-剣を握りし果てに-
第1話 努力-諦めろと俺の心が囁く-
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…おぉ、“ジュウ”っていったぞ、“ジュウ”って!」
「行けるか? それとも、もっと当てるか?」
「……お蔭様で行けそうですっ…………くっ、おぉおおおぉぉぉっ、あがれぇぇぇっ!」
「「「「「「「「三っ百! いっやったぁあああぁぁぁっ! 胴上げだぁぁぁぁぁっ!」」」」」」」」」
「「「「「「「「翔玄! 翔玄! 翔玄! 翔玄! 翔玄!」」」」」」」」」

 悪いな……努力する事を忘れて、諦める事に必死になったお前に言われても、その言葉は価値がある言葉に聞こえない。
 お前の言葉は軽い、軽すぎる……見てみろよ、俺さ、何時もの様に訓練で……今回は自主練習で、たまたま、三百回腕立て伏せを“諦めるお前”と悪戦苦闘しながらも必死にこなしただけで、皆は泣いて喜び俺を胴上げして“祭り”の様になっているぞ。
 俺にとっては、この人達の「頑張れ」の応援の言葉の方が重い……「やらなきゃ」と無駄に力が湧いてくる。
 確かに、お前の言葉は、きっと、“現実的”で正しい事かも知れない。でも、その正しさを教えてくれたのは俺達の良く知っている“お節介な人達”じゃないか?
 お前はあの“お節介な人達”と同じだよ、自分達にとって“都合の良い正しい言葉”を、まるで、当然の事であると無責任に息をする様に口から吐き出す。

 憶えているか……あの村にいた時に……何故、周囲の大人達は口を揃えて同じ言葉を俺達に言い聞かせるに毎日、毎日、飽きもせずに言い聞かせる様に言ったのか?
 あの村では俺達の家庭は少しばかり“裕福”な家庭だったからだ。そして、俺達の家族は笑顔が絶えない良い家庭だった。そんな少しの違いが積もり積もって、様々な負の要因と結びついて、許せなくなるんだ。何故、こうも違うんだ……不公平だって。
 そして、彼等は”世間体”や”都合の良い現実”に惑わされて、まともに生きていない者達だ。

 きっと、理由はそれだけなんだ――。

 ある時に幼馴染の“王”が俺に言った。
 「家の母ちゃんさ、たまにお前の事を悪く言うけど。本当は、御近所付き合いの為に、その場で適当な事を合わせて言っているだけだから。ほら、おいらの母ちゃんの手作りの“握り飯”。お前の事を陰ながら応援しているってさ、勿論、おいらもお前の事を何時も応援しているぞ」……あの時は本当に泣きそうになった。
 “王”だけじゃない、“朱”、“李”、“黄”、“厳”、“韓”達もだ。あいつ等さ、もう、諦めようかと考えていると決まって俺を励ましに来るんだ。そして、決まって“王”と同じ様に俺の味方であると励ましてくれたよな。
 そう、今更ながらに気づいたけど、俺だけが描いていた“夢”がさ――あいつ等と一緒に描く“壮大な夢”になったよな。諦めて良い筈がない……きっと、俺が諦めて村に帰る事になっても、あいつ等は許してくれるだろう。
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