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歌集「春雪花」
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 密やかに

  想いそぼ降る

   秋の夜の

 月影落つる

    風もなきにし



 静かな夜更け…耳を澄ませば、遠くから微かに車の走る音がするだけ…。

 そんな静けさの中に一人でいると…まるで雨が降るかのように、彼への想いが募ってくる…。

 遠く…また遠く…。彼はここにはいない…。

 窓の外には月明かり…世界を蒼白い光で満たしていた…。

 風はなく…草木の掠る音さえしない静かな夜更け…。


 泣くことさえ…儘ならない…。



 野も枯れて

  冬を待ちにし

   侘しさに

 君に逢いたき

     心叱りし



 見渡せば野の草も枯れて、辺りは冬支度を整え始めている…。

 長く寒い冬…凍てつく寒さが心までをも多い尽くす季節…。

 また…堪え忍ばねばならないのか…。彼のいない冬…。

 会いたい…そう思う権利すら私にはないのだ…。

 だが、心は会いたいと願い続け…私を遠くへと誘う…。

 そんな心を…私は叱りつけ、己の愚かさに溜め息を吐くのだ…。




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