暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン59 蹂躙王と暴食の憑依
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ような顔になる。1瞬の沈黙ののち、その身を震わせ口を耳まで裂いて笑い出した。

「クククク、ワハハハハッ!これは面白い、ああ全く面白い!人間、私のことがわかるかね?」
「え?」

 耳をふさぎたくなるような笑いのなかで放たれた謎の質問に虚を突かれ、まじまじとその悪魔を見る。その姿には何一つ見覚えがなかったが、燃えるような目にはどこか見覚えがあった。どこだったか、そう遠くない過去に一度、確かに見たことがあるような。だけど、悪魔の知り合いなんてそれこそ腐れ縁のラビエルぐらいしか僕にはいない。
 だが、そこでふと引っかかるものを感じた。ラビエル……アカデミアで戦い、その後砂漠の異世界でも戦った。砂漠の異世界……そうだ、あの世界でもこんな目の持ち主を僕はみた。

「憑依するブラッド・ソウル!」
「おやおや、思い出してくれて嬉しいよ。もっとも、今の私は憑依しか能のない下級悪魔ではなく魔人……そう、魔人 ダーク・バルターとなったがね。この体の持ち主だったご老体には気の毒なことをしたが、この体は魔力に満ちていて実に私にはよく馴染む」

 気の毒、と口では言いながらもその嘲り口調からはとてもそんな思いは感じられない。前は人外の存在が無理に人の言葉を喋っているような調子だったが、今はベースとなった辺境の大賢者が人型モンスターだからかその台詞や言い回しにも違和感がなく、それどころか砂漠で三沢と戦っていた時には見られなかった冷たい知性すら感じられる。また黒いドロドロした負の感情が体の底から湧き上がってくるのをなんとか押しとどめ、睨みつけるだけにとどめておいた。……ここでいくら怒ったところで、デッキが無くデュエルができない僕がこの悪魔に勝てる可能性は0だ。

「そら。受け取りたまえ」

 ブラッド・ソウル改めダーク・バルターが賢者の物だったローブの中からカードの束を取り出し、こちらに向けて放り投げる。反射的に受け取ったそれは、やはりというかなんというかデュエルモンスターズのカード。その意図がわからず警戒したままの僕に、ため息をついて幼児にものをひとつひとつ教えるかのごとき口調でダーク・バルターが話し始めた。

「これはこの可哀そうなご老体が生前使っていたデッキだ。ご老体の記憶によれば、君には今デッキがないのだろう?」
「何がしたいわけ?」
「そう喧嘩腰にならないでくれたまえ。これは私からの最大限の温情なのだから」
「温情?」
「そうだとも。一つ賭けをしてみないかね?今から君と私がデュエルをする。君が勝てば、私は今度君に一切手を出さないと約束しよう。だがもし君がこの賭けを断るか、あるいは敗北すれば私は君を喰う。人間の肉は、我々悪魔には大変な珍味でね。特に、絶望や恐怖している物ほどいい味が出る」

 要するに、わざとひとかけらの希望を与えた
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