第38話『イベント』
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鳴った。
ラグナは急いで店内に戻りながら、大きな声で挨拶する。晴登とユヅキも、奥からこっそり店内を覗き見た。
「お客さん…だよね?」
「そうみたいだね」
2人の間に小声のやり取りが起こる。
目の前、ラグナが普段の顔に似合わない営業スマイルを貼り付けて、接客している様子が見えた。
「今日はどのようなご用件で?」
「時計の修理を頼みたいです。無理そうでしたら、新しいのを買いますが」
お客さんは凛々しい男性だった。一言でいえばイケメンである。しかも、優しそうな雰囲気をしていた。
「時計は持ち合わせてますか?」
「はい。これです」
一瞬、ラグナの顔が強張る。
男性が出したのは腕時計だった。これもまた、晴登の持つイメージそのまま。針がどれ一つ動いていなかったのが、唯一の違いだろう。
ラグナの店では、柱時計や掛け時計しか見ていないので、この世界に腕時計がないのではと密かに思い込んでいたのだが、そうではなかったようだ。
うーん、腕時計の修理は細かくて難しそうだから、大変そうだな。
……と、そこまで疑問が浮かんだ所で、あることに気がつく。
「ねぇユヅキ、この店ってあんな時計置いてないよね?」
「うん、取り扱ってないよ」
ユヅキは“腕時計の修理”ということに、全く違和感を持っていない様子だ。
しかしこのままではマズいんじゃなかろうか。店に腕時計がないということはつまり、ラグナは腕時計を取り扱ったことがないと考えられる。
そうか、だから顔が強張って──
「わかりました。では、まずは修理をやってみます」
「お願いします」
「!!」
ラグナは修理をすると言い切った。
自信満々…とまでは言わないが、少なからず自信の含まれた言い方である。
「明後日までに直しますので──」
「その日にまたここに、ですか。わかりました」
ラグナは尚も営業スマイルを崩さない。
きっと大丈夫なんだ、直し方を知っているんだと考えてみるも、彼の頬を伝う汗がそれの証明を阻む。
チラリとユヅキを見ても、彼女は特に何の反応もしていない。疑問に思わないのだろうか。
「それではまたのお越しを」
「はい。修理お願いします」
そうこうしている内に、客は外に出ていった。
晴登はすぐさまラグナに駆け寄る。
「ラグナさん!」
「お、どうしたハルト?」
「修理、ホントにできるんですか?」
「……っ!」
またもラグナの顔が強張る。
スマイルは見事に崩れ、焦った様子を見せた。
「あ!? 楽勝だよ楽勝! いっつも時計触ってんだし? できねぇ訳ねぇだろ?!」
「でもこ
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