第38話『イベント』
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少しいざこざがあってね。ボクは流れでこの街に辿り着いたんだ」
「で、お金とか全く無くて、流れでラグナさんの世話に」
「そんなとこ。ここで働いてお金が貯まった頃に、今住んでる家に住み始めたんだよ」
「へぇ〜」
思ったよりスムーズに、ユヅキは身の上話を語った。晴登は相槌を打ちながら、それを聞いていく。
しかし、今ですら幼いユヅキが、さらにその昔に1人で王都に辿り着くなんて、余程のことじゃないのか? まさか・・・
「少し訊きにくいんだけど、その…親は?」
「え? あぁ、気にしなくていいよ。ボクが勝手に一人暮らししてるだけだから。親はまだ健在だよ」
「あ、そうなの!? そうか…」
自分の持っていた解釈と違う答えを返され、晴登はしばし困惑。頭を掻きながら、次の質問を考える。
と、ユヅキが先に口を開いた。
「晴登ばっかり質問はズルいよ。ボクも気になることは色々有るんだから」
「あぁ…じゃあどうぞ」
ユヅキがまたも膨れっ面をするので、ここは素直に引き下がる。
すると彼女はコホンと咳払いをし、質問をぶつけてきた。
「ハルトは魔法が使えるよね? あれは何で?」
「何で? 何でって・・・教えられたから?」
「誰に?」
「部長からかな」
「ブチョウ?」
「…あ」
次々と繰り出される質問に続々と答えていると、つい異世界では通じない発言をしてしまう。
どう取り繕うか考えると、別に必要はないという結論に至った。
「う〜ん、まぁ師匠みたいなもんかな」
「へぇ〜。じゃあその人もボクらの歳の頃には魔法を使えてたのかな?」
「え? あ〜どうだろ」
「ふーん」
意外や意外、部長に興味を持つユヅキ。
晴登はその事実に驚きを感じるも、それほど彼女は魔法を幼くして使えることに驚いているとわかれば、自然と納得がいった。
「おーい、時計の整備はどうだ?」
「あ、ラグナさん」
ふと、晴登らの輪にラグナが乱入する。
彼は店番を一旦離れ、店の奥の部屋であるこの時計の保管部屋での晴登らの様子を確認しに来たようだった。
「店番してなくていいんですか?」
「だって客が来ねぇんじゃ意味ねぇだろ。ま、いつも通りだけどよ」
「そうですか…」
晴登が問い掛けると、ラグナは首を振って返した。
その答えを聞いたユヅキは、シュンと寂しそうな表情になる。この感じだと、給料よりも店の繁盛自体がユヅキの望みだろう。
やっぱ呼び込みをしようか。その考えが頭に浮かんだ瞬間、
「すいませーん」
「「!!」」
「おっと・・・いらっしゃい!」
店の扉に付いているベルが
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